介護保険制度を中心とする行政情報、各地の市民活動団体の活動などを紹介しながら、みなさんとともに「市民福祉」を考えていくサイトです。

1.区分支給限度基準額に関する調査について

 2011(平成23)年2月7日に行われた
 
第71回介護給付費分科会において、
 「
区分支給限度基準額に関する調査結果」が発表されました。

 目的は「区分支給限度基準額を超えて
 サービスを利用している者(以下「超過者という」)
 及び区分支給限度基準額の7~9割程度
 サービスを利用している者(以下「7~9割の者」の
 実態を把握する。

 

 結果について、新聞などで報道されましたが、
 じつに不正確な内容です。
 審議会ではデータだけが一人歩きするという危惧も
 表明されましたが、やはりその通りでした。
 この調査そのものが、
 目的である「実態を把握する」ものになっておりません。
 しかも審議会席上厚労省担当者は
 「参考までに」といっているのに、
 過剰なまでに「いい調査だ」と持ち上げる委員がいたりました。
 大方のところは、調査設計のおかしさ、
 データ判断の是非について異論続出であったと思います。

 

 調査結果の概要を見ると、
 ①超過者、7~9割、ともに2種類以下のサービスが8割以上
 ②訪問介護や通所介護などの見守りサービスが多く、
  訪問看護・医療系が少ない
 ③ケアプラン点検者による評価では、
  「見直す余地がある」9割

 

 以下、訪問介護サービス内容を見ると、
 身体介護に比べ、掃除、洗濯、調理、配膳などの
 生活援助の利用が多かった。
 超過者の理由は
 「家族などで介護が補えないため(77.5%)」
 「利用者本人や家族からの強い要望(47.7%)」。
 調査の結論は、
 「区分支給限度額については、
 まず、ケアマネジメントの実態を踏まえた上で、
 議論すべきではないか」でありました。

 

 この調査は、はっきりいってケアマネバッシングです。
 まず、調査設計に納得いかないのです。
 しかも最大の問題点は、
 看護師2人、介護福祉士など2人が、
 利用者宅を訪問もせず書面だけで評価したらしいことです。
 ケアプラン作成に関しては、
 ケアマネは何度も利用者宅を訪問し、
 家族関係や家屋構造などなど多様な現実に即して、
 それなりの判断の上でケアプランを立てています。

 

 それを現場も見ずに評価するとは、
 しかも家族の御用聞きのようなことを云々するのは、
 ケアマネジャーという職業への冒涜ではないでしょうか。
 審議会席上、ケアマネ関係者から
 そういう怒りの声が聞こえなかったことが残念でなりません。

 

 また、利用限度額をオーバーしているのは、
 全体の3%ということですが、
 だいたいこの「利用限度基準額」というのは、
 どのような積算の上で決められたのでしょうか。
 この10年一度も変更されていませんが、
 それはどのような理由なのでしょう。

 

 たびたび出てくるのが、
 「医療系が少なく福祉系が多い」ということ。
 これは、医療サービスに誘導させたいのでしょうか。
 福祉系のサービスが多く、しかも二種類程度というのは、
 じつにつつましい利用ではありませんか。
 ケアマネさんの努力がしのばれます。
 医療系サービスの単価が高いということもあるかもしれません。

 

 しかも、報道などでは、
 すべてのケアプランが見直す余地ありとするがごとき論調や、
 家族が介護できないのは
 ワガママだといわんばかりの論調もあり、
 まさにデータの一人歩きです。
 家族には高齢夫婦や、介護者が疾病を抱えていたり、
 支給限度額範囲を超えてもいたしかたないと
 悲しい決意をしている人もいるのです。

 

 何よりも残念なのは、某大新聞はこの調査に
 批判的な意見はほんの少ししか載せずに、
 過大評価した学者の発言を固有名詞つきで
 持ち上げていることです。

 

 たとえば、週7日、一日4回、各30分のケアプランは
 「過剰」と批判されたことについて、
 利用者代表の委員はこう発言しています。
 「なぜこれが過剰なのか。施設ならば、
 これ以上のサービスあがるではないか」と、
 在宅と施設のサービス格差を指摘しましたが、
 新聞は無視しています。
 不足のサービスとして、
 評価者は訪問看護、通所リハ、通所介護などが
 指摘されていますが、
 人の中に出ることに恐れを抱く人も少なくありません。

 

 介護保険に関しては、
 最近のマスコミは「大本営発表」が多くなりました。
 こうやって利用者からサービスが奪われていく、
 そのプロセスを見て、介護保険への危機感を
 より深めているのは、私だけでしょうか。
 介護保険は、利用者への締め付けが
 ますます進もうとしています。(沖藤典子)


※沖藤典子さん(ノンフィクション作家)の
 審議会傍聴記は
 ご本人の許可を得て、
 沖藤典子の公式ホームページ「らっきょう亭」から
 転載させていただいています。