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介護保険法の一部改正案への要望(2011.04.28)

日本高齢者生活協同組合連合会は4月28日、

「介護保険法の一部改正案への要望」を

衆議院厚生労働委員会、参議院厚生労働委員会の全委員、

厚生労働省老健局長に提出しました。

 

高齢者生協-要望書.pdf

 

2011年4月28日
日本高齢者生活協同組合連合会
第5回理事会
東京都豊島区池袋3-1-2 光文社ビル6F
℡03-6907-8043 Fax03-6907-8041

 

介護保険法の一部改正案への要望


1.介護予防・日常生活支援総合事業は、自己決定権を認めず、軽度者排除につながる危険があり、導入に反対です。

 

2.定期巡回・随時対応型訪問介護看護と、他の居宅サービス(通所介護や訪問介護など)との併用を認めて下さい。

 

3.保険者の主体的な取組みの促進は必要ですが、居宅サービス事業者の参入規制の強化には反対です。市民参加をもっと促す仕組みが必要です。

 

4.介護保険制度は高齢社会を支える大事な仕組みです。分かりやすい制度にすることに加え、増加する介護ニーズに応えるための安定的な財源確保が不可欠です。

 

介護保険法の一部改正案への要望

 

1.介護予防・日常生活支援総合事業は、自己決定権を認めず、軽度者排除につながる危険があり、導入に反対です。
 要支援1・2の認定を受けた人に対して、利用者の意向を尊重し、状態に応じて、予防給付か、介護予防・日常生活支援総合事業かを、自治体又は地域包括支援センターが判断する、となっています。
 これは、要支援者の自己決定権の侵害です。
 第115条の45「介護予防・日常生活支援総合事業」は、予防給付と異なり、サービスの質を担保する基準がなく、さらに利用料金に関する規定もありません。

 全て自治体に委ねられています。特に、利用料金の負担が重くなれば、サービスを受けず、事実上の軽度者排除につながり、重度化を招くことになるもので、導入には反対です。
 仮に導入するにしても、要支援と認定された人には、「予防給付」と「介護予防・日常生活支援総合事業」の併用を認め、適切なマネジメントの下で、早期に自立を促すべきだと考えます。
 どちらかのサービスしか認めないと考えるべきではありません。

 

2.定期巡回・随時対応型訪問介護看護の導入には疑問が多い。
 導入するならば、他の居宅サービス(通所介護や訪問介護など)との併用を認めるべきです。
 定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、施設や病院における介護・看護を地域で展開するイメージで、短時間の定期訪問サービスが想定されています。
 医療ニーズが高まることを前提に、強引に導入されようとしているように思えます。
 夜間対応型訪問介護が十分機能していない点の総括もないままです。

 機能しないサービスがもう一つ増える懸念があります。
 さらに、介護保険財政が厳しい点も考慮するなら、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の導入で、他の居宅サービスの報酬引き下げが予想されます。
 介護報酬の引き下げは、経営を圧迫し、賃金低下を招きます。導入には相当に慎重であるべきでしょう。
 仮に導入されたとして、短時間の巡回では、掃除や洗濯、食事介助、散歩などの支援は、ほとんど難しいのではないでしょうか。
 家族の介護力なども考慮しつつ、必要がある場合は、訪問介護との併用を認めるべきだと考えます。
 また、通所介護の利用も認めるべきです。在宅での生活に閉じ込めることは許されないことです。
 もし、こうした併用を認めないとすれば、寝かせきりをつくる最悪のサービスになりかねません。

 

3.保険者の主体的な取組みの促進は必要だが、居宅サービス事業者の参入規制の強化には反対です。

 市民参加をもっと促す仕組みが必要です。
 市町村及び都道府県の主体的な取組みの推進として、いくつかの改正案が示されています。
 その一つは、居宅サービスの指定権限です。第70条第7項・8項 第203条の2指定都市や中核市に居宅サービスの指定権限や監督権限が移譲されます。
 他の市町村も「地域密着サービス」との兼ね合いで事前協議が可能となり、事実上居宅サービスへの参入を制限することが可能になっています。
 これは市場に介護サービスを委ね、市場競争の中で介護サービスの質的強化を図り、利用者に選択肢をひろげるという介護保険制度の導入時に謳われた趣旨に逆行するものです。
 私たちは、どんなに小さな組織でも、指定基準をみたせば、介護保険サービスに参入できる仕組みを評価しています。

 市民主体の非営利組織が小規模でも参入が可能であり、市民の介護への関心を高め、ひいては地

域の介護力を高めることにつながると考えているからです。
 しかし、今回の改正は、居宅サービス事業者の参入を規制するものです。
 これでは介護事業者が限定され、利用者の選択肢も今以上に狭まる可能性があります。
 市町村の主体的な取組みの強化は必要です。
 高齢者福祉に関して、介護保険に限らず市町村はもっとイニシアティブを発揮すべきだと考えます。
 しかし、その前提には、市民参加(ユーザーデモクラシー)が必要です。
 例えば、2005年の改正で新設された地域密着サービスの指定権限は市町村にあります。
 その結果、グループホームはあっても、小規模多機能型居宅介護は一ヶ所もないという市町村が存在します。
 当該の住民はサービスを選ぶことさえできません。

 市民の声が反映されていないからではないでしょうか。
 市町村が十分利用者・市民の声を聞かず、介護サービスへの参入規制をすすめ、一部の限定された介護事業者に頼ることになれば、市民の参加を事実上排除する方向に進むことが懸念されます。

 

4.介護保険制度は高齢社会を支える大事な仕組みです。
 分かりやすい制度にすることに加え、増加する介護ニーズに応えるための安定的な財源確保が不可欠です。
 社会保障制度の持続的発展には、利用者や事業者の制度理解が不可欠です。

 人の命と暮らしを守る社会資源だと考えているからです。
 社会の一員として支え合いの仕組であるという理解を欠き、単なる権利としての利用や市場原理に委ねるだけでは、連帯の仕組みである制度は非常にもろいものになってしまうでしょう。
 制度の前提となる理念の国民的理解が重要です。
 しかし、残念なことに、制度そのものの本質的理解が進まず、改正のたびごとに基礎を支えた理念を離れ、小手先の規制強化や給付抑制策が繰り返され、制度は複雑で分かりにくいものになっています。
 今回の改正案も、その流れから脱皮できていません。
 今後増加することが確実な介護ニーズを支えるために、多くの介護労働者の確保が必要です。

 その為にも安定的な財源の確保は不可欠です。

 国会の審議にあたり、制度の根幹を支えた理念は何だったのか、軽度者の利用抑制が重度化つながらないか、無駄な制度ができないかなど、介護現場の現実を踏まえた、多様な視点からの審議を強く望むものです。