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CF071 『母の身終(みじま)い』 QUELQUES HEURES DE PRINTEMPS
「死の自己決定」の手法

48歳のアラン(ヴァンサン・ランドン)は、長距離トラックの運転手だったが、「ヤバい物」に手を出して、刑務所を出たばかり。
仕事もお金もなく、ひとり暮らしの母・イヴェット(エレーヌ・ヴァンサン)の家に転がり込む。
「ここは私の家よ」と主張するイヴェットは、タバコに文句をつけ、散歩の後、犬の足を拭かないと非難する。
でも、息子に「インスタントしかないのか」と言われ、新品のコーヒーメーカーを買ってあげたりもする。
挫折続きの人生に苛立つアランだが、友人に誘われたボーリング場で、クレメンス(エマニュエル・セニエ)という魅力的なシングル・マザーと出会った。ゴミの分別という単調な作業だが、仕事もみつかった。

そんなある日、アランは引き出しにあった「尊厳死の権利の表明」という書類にイヴェットのサインをみつけた。
母の主治医を訪ねた息子は、彼女が脳腫瘍で余命短いことを知る。
医師は「この病院には終末期医療の設備がありますが、お母さまはスイスの施設で、介助されて死ぬことを希望しました」と語る。
アランが書類を見たことに気づいたイヴェットは、「テレビで知って、資料を送ってもらい、よく考えたの」と告げる。
しかし、息子は「最悪の結果だ」と現実から目をそらす。
おまけに、せっかくできた恋人に前科を打ち明けることができず、愛想を尽かされる。
ヤケになって仕事を辞め、「父親そっくり」と怒るイヴェットに「さっさと死ね!」と捨てゼリフを残して、家を飛び出すが...。

「尊厳死」には、注射や薬物で人為的に死期を早める「積極的尊厳死」(「安楽死」とも呼ぶ)と、延命治療を中止して自然の摂理に従う「消極的尊厳死」があるという。
日本では、人工的な栄養補給や呼吸器の中止をめぐる「消極的尊厳死」が当面のテーマだ。
しかし、スイスやオランダなどいくつかの国は、「積極的尊厳死」を合法化している。
フランスでは「積極的尊厳死」は自殺幇助罪になるため、イヴェットはスイスの「尊厳死支援団体」(実在の団体『ディグニタス』がモデル)に入った。
不仲な母と息子の葛藤だけでなく、支援団体による意思確認の手続き、美しいスイスの山あいにある「施設」など、「積極的尊厳死」の手法という予期せぬことも教えられた。

(ステファヌ・ブリゼ監督/2012年/フランス/108分)