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CF074 『あなたを抱きしめる日まで』 Philomena
人生の心残りを探して...

フィロミナ・リー(ジュディ・デンチ)は、信仰心の篤いカトリック教徒。
長く連れ添った夫亡きあと、ひとり娘との関係も良好。
ロマンス小説が大好きで、人工股関節の手術に「チタンだから錆びなくていいのよ」と笑わせるユーモアもある。

だが、彼女には大きな心残りがあった。
10代の頃、故郷のアイルランドで出会った素敵な彼との間に生まれた息子がいるのだ。
カトリックは中絶を許さないが、未婚の妊娠もまた認めない。
父親はフィロミナを修道院に預けた。
修道女たちの冷ややかな視線のなか、出産を助けてもらったお返しに、フィロミナは4年間、無償労働を課された。

修道院には彼女と同じ境遇の少女がたくさんいて、子どもと会えるのは毎日1時間だけ。
そのうえ、修道院は勝手に子どもたちを養子に出してしまった。
修道院を出た後、フィロミナはイングランドで結婚した。
看護師として働きながら50年間、ずっと息子を捜してきたが、行方はわからない。

ため息ばかりの母を心配した娘は、たまたま出会ったマーティン・シックスミス(スティーヴ・クーガン)に協力を求めた。
マーティンは、濡れ衣で政府広報官をクビになったばかりのエリート記者。
雑誌の特集に売り込み、フィロミナとともに息子の足跡を追う。

世代交代した修道院の担当者は、子どもたちの記録は火事で失われたと言う。
だが、マーティンは地元のパブで、修道院が富裕なアメリカ人に子どもたちを売っていた事実を聞きだす。
マーティンはフィロミナを連れてワシントンに飛び、移民局ファイルやインターネットを駆使して息子を発見。
だが、彼は大統領の法律顧問として活躍し、ゲイであることを隠したまま1995年、HIV(エイズ)で亡くなっていた...。

原作は2009年にイギリスで出版された実在の物語。
フィロミナは、息子に会いたいと願いながら「現実になったら怖い」と記事にするのを認めたり、拒んだりとマーティンを振りまわす。
「ベトナムで戦死していたら」という時代性になるほどと思い、「肥満だったら」というアメリカ観に笑ってしまった。

カトリック教会に憤慨するマーティンに、フィロミナは「赦すには苦痛が伴うの」と諭す。
信仰のほか、児童売買やHIV差別など、20世紀の記憶を思い起こす作品。


(スティーヴン・フリアーズ監督/2013年/イギリス・アメリカ・フランス/94分)