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BF101 『ルポ保育崩壊』
保育現場の実態

4月14日、塩崎・厚生労働大臣が記者会見で「介護・福祉サービス・人材の融合検討チーム」を設置すると発表した(厚生労働省広報室 塩崎大臣閣議後記者会見概要)。
主要紙は「介護福祉士と保育士の資格を一本化」と報道し、「人口減と福祉の人材不足を考えると資格の一本化は不可避」(2015.04.19毎日新聞社説)という支持まであった。
その後、どうなっているのか不明だが、では、保育の現場はどうなっているのかと思い本書を読んだ。
政府は「女性が輝く日本」を作るため、待機児童の解消について2017年度末までに40万人分の保育所を確保すると掲げている。
しかし、器は用意されても、保育士というマンパワーの確保が追いつかない。

施設保育は認可保育所と認可外保育所に分かれ、認可はさらに公設公営、公設民営、民設民営に細分される。
著者が問題視しているのは株式会社が経営する保育所だ。
「なんで、泣くのよ!」と一歳児に叫ぶ保育士。
食べ終わるのが遅い子の後ろにまわり、おわんとスプーンを持って料理を無理矢理、口に入れる保育士。
部屋に柵で囲ったスペースを作り、その中で子どもたちを遊ばせ、園庭がないビル内保育所では3週間、お散歩ゼロ。
ようやくみつけた保育所である以上、保護者である母親の立場は弱い。
「ほいくえん、いや」とわが子に言われ、仕事を辞めたほうがいいのかと悩む。
保育所が足りないと数ばかりが注目されるが、保育の質に関心が及んでいない現実がある。

紹介される事例のひどさに驚かくが、「現場は空前の保育士不足」。
だが、公立保育所ですら臨時・非常勤職員が増えている。
おまけに、親の長時間労働が増えているため、延長保育が広がっている。
「安全を保つのがやっと」の現場で、サービス残業が常態化し、休憩室もない。
子どもと同じ給食代を給与天引きされ、妊娠にはマタニティ・ハラスメントが待ち構え、「職場流産」も多いという。
経営者にとっては、ベテランで人件費の高い保育士より、「保育マニュアルを作って若い人を入れ、数年経って辞めて入れ替わってくれればいい」のではないかという指摘もある。
労働環境が改善されないなか、資格を持つ潜在保育士は60万人以上という。
人手不足のなか、死亡事故も起こっている。
構造的な問題は介護現場と驚くほど似ているが、この世から退場する高齢者と未来を育む乳幼児では、保育現場のほうに深刻さを感じる。

非正規雇用が激増し、共働き世帯が過半数になり、保育所はなくてはならない存在だ。
補助金の構造的課題を整理し、保育士の処遇改善とともに、「子どもを中心に考えた保育」を整備する必要があると訴える。
保育士とホームヘルパー、介護福祉士には共通課題が多いことを教えられたが、資格統合の前に、保育と介護という福祉労働の課題をこそ統合して整理し、総合的な対策を打つのが先決だと考えた。
(小林美希著/岩波新書/864円)