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2016.07.01 マイケアプラン研究会「新総合事業についての要望書」
要望書

1.新総合事業では、対象者の要介護認定調査の確認を利用の第一段階に位置づけること。
 具体的には、保険者、地域包括支援センター、新総合事業に関わるすべての事業所等が、対象者に要介護認定調査を受けるよう案内し、対象者が要介護認定調査を希望しない場合のみチェックリストで対応する。これは事後において要支援、要介護の必要な給付が行われず、利用者の自立が妨げられることを防止する上で重要である。

2.新総合事業の策定に当たっては、その進行状況を市民、介護保険関係事業所、関連団体等に随時公開し、意見聴取すること。
 市民団体等から要請があれば、新総合事業の内容説明、進行状況、自治体がその段階で保有する情報を最大限公開すること。

3.新総合事業は複雑多様なサービス体系となっている。そのため保険者、地域包括支援センター、新総合事業に関わるすべての事業所等が対象者に新総合事業の全体像、サービスの流れを最初に十分説明し理解を得ることが不可欠である。
 例えば、同じ生活支援サービスであっても、現行の訪問介護相当、訪問型A、訪問型B, 訪問型C、訪問型Dとあるので、その全てを説明の上、利用者の選択権を尊重して決定するものとする。

4.新総合事業の利用に際してもサービスの自己選択は認められるべきであり、当然、ケアプランの自己作成も認められるべきである。
 そのため、利用者の承諾のないケアプランは作成しないこと。ケアプランに利用者の承諾を示す箇所、利用者の要望事項を書き込む欄を設けること。

5.介護保険法の目的は、新総合事業を含めて利用者の自立した生活の確立にある。
 制度を利用しないことの奨励、あるいは一旦利用を認めても半ば強制的に「卒業」と称する利用の中止、利用期間の設定をしないこと。

6.新総合事業のサービス内容を決める会議は複数設定されることが予想されるが、必ず利用者の出席が保障され、利用者が自由に発言できることが保障され、結論を利用者に押し付けないこと。

7.現行の要支援者及び要介護者の新総合事業への移行、新たに認定された要介護者の新総合事業の活用については、その世帯全体と利用者個別の状況やニーズを総合的に検討の上、将来計画を確認して利用者の承諾のうえ、新総合事業の利用決定をすること。

8.新総合事業は、介護保険法の給付の一環であることを確認の上、現在の要支援者に対する給付水準を絶対に維持するのは当然とし、さらにより充実した内容の設定により、利用者の日常生活維持を図ること。
 併せて、新総合事業が要支援に該当しない高齢者一般の方にも利用できるようにすること。

9.利用者の状況によっては新総合事業と介護保険サービスの両方が必要である場合や、状況の変化(改善、悪化)により両制度間を行ったり来たりする場合があるが、そうした場合に利用者や家族等に混乱や負担がかからないようにすべきである。

10.2015年度の介護報酬改定は事業者にとって非常に厳しいものであったが、加えて新総合事業への参加による収支状況の更なる悪化は事業の安定的継続を大きく脅かすものである。
 こうした事態に対して何らかの行政的配慮が必要である。

11.新総合事業の訪問介護において、生活援助は「現行の訪問介護相当」としても認められるべきであり、生活援助を国基準の訪問型サービスA、またはBに限定しないこと。

12.通所型サービスにおける、国基準を緩和したサービスは、実際に設定しても事業の採算基準に合わないため応募する事業所がないとみこまれる。
 仮に応募する事業所があり、実施に至っても、将来参加事業所の倒産、撤退により混乱が生じかねないと考えられる。
 それならば、通所介護においては「現行の通所介護相当」を維持する方が適当である。
 なによりも、自治体の基準設定については、事業所の経営状態や職員の給与条件等への負の影響を考え、実施に当たっては具体的内容を事業所と協議し、市民団体の意見を聴取のうえ成案を策定すること。

13.新総合事業は行政サービスであり、その点での行政上の責任は明確でなければならない。
 ボランティア等への安易な委託は責任放棄につながる。

14.新総合事業は介護予防や地域コミュニティづくりにつながることが期待されているようであるが、果たしてそうした期待や到達目標に対する効果測定(事業評価)をどのように行うのかが明確にされるべきである。
 また、行政として、「地域包括ケアシステム」を介護保険制度、なかんずく、新総合事業においてどのように位置づけているかを明確にし、それについて、利用者、事業者、学識経験者、市民等から幅広い意見を聴取し、行政としての見解を公にすべきである。

15.新総合事業の実施過程で、当該事業が計画に従っているか、予想された成果を上げているか等の確認は、地域包括支援センター、日常生活支援コーディネーター等が継続的にその調整業務として行うことになっているが、新総合事業の最終的な責任は事業者であり、且つ保険者である市町村にあることを明確にし、新総合事業そのものの継続的な向上を保険者として講ずること。

16.介護保険法やそれに基づく介護保険サービスや介護報酬は、政府の財政上の理由等によりしばしば改悪されてきた。
 介護保険財政を悪化させている要因は非常に複雑である。
 従って自治体においてはそのことがどのように分析・評価されているのか、明確にされるべきである。

17.要介護高齢者等が社会的に孤立している状況等は以前から指摘されているが、介護保険制度の運用がそうした状況にどのような影響を与えているかに関する自治体としての分析・評価を公にすべきである。

18.新総合事業におけるサービスの担い手として高齢者等が就労することにはそれなりの意義がある。
 しかし、そのサービスは日常生活において各種の支援を必要とする人々を対象に行われるものであり、一定の質と継続性が求められる。従って法に基づく雇用関係を明確にし、賃金もその労働の質に見合ったものとすること。

19.新総合事業におけるサービスの担い手のための研修においては、生活支援サービスが身体介護と同等かそれ以上に極めて個別性を求められるものであり、利用者のライフスタイル(生き方や価値観)を重視したものでなければならないことを徹底すべきである。
 また、研修参加者や利用者の声をシッカリと汲み上げ、継続的に質的向上と量的拡大を図ること。

20.他方、新総合事業はまちづくり活動の一端を担うものでもあり、その意味においてNPOやボランティア(個人、団体)がそれに主体的に参加することは意義あることである。
 この場合、上記で述べた就労(雇用)とは峻別される必要があり、一定の財政的支援を行う場合も実費弁償の範囲を越えるものであってはならない。
 あくまでも団体、個人の自主性を尊重し、行政の都合に合わせた押し付け、囲い込み、無理な勧誘はしないこと。
 また、当該団体や個人の地域との関わりを尊重し、現在までに築き上げてきた関係を尊重すること。
 要するに(結果としてボランティア潰しにつながるような)行政によるボランティア活動の買い上げ(ボランティアの雇用)は絶対に行うべきではない。


2016年7月1日
マイケアプラン研究会
代表世話人 小國英夫