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2017.03.22 国会に「介護保険法改正案に関する要望書」を提出しました
3月22日、介護保険ホットライン企画委員会と介護労働ホットライン実行委員会は、通常国会に提出されている介護保険法改正案について、「要望書」を提出しました。
提出先は、衆議院厚生労働委員会(丹羽秀樹・委員長)委員45人、参議院厚生労働委員会(羽生田俊・委員長)委員25人で、介護保険法改正案を審議する予定の70人の国会議員です。

衆議院 厚生労働委員会 委員のみなさま
参議院 厚生労働委員会 委員のみなさま

2017年3月22日
介護保険ホットライン企画委員会 共同代表(NPO):小竹雅子、小島美里、林洋子
介護労働ホットライン実行委員会 共同代表(弁護士):大江京子、井堀哲、藤澤整

介護保険法改正案に関する要望書

 日頃から、行政全般にわたる推進にご奮闘されていることに敬意を表します。
 「介護保険ホットライン企画委員会」は首都圏の市民活動団体で、2006(平成18)年から介護保険制度について、利用者、介護者を中心に広く市民の声を集める電話相談を開設しています。
 「介護労働ホットライン実行委員会」は、弁護士を中心に、2013(平成25)年、2014(平成26)年に電話相談「介護労働ホットライン」を開設しています。

 現在、通常国会に介護保険法改正案が提出されています。
 しかし、改正案には多くの問題があります。
 特に、2014年改正の影響調査、検証がまったくないなか、根拠なく新たな改正が行なわれることは、納得できません。
 介護保険料を払う被保険者は7,450万人にのぼりますが、多くの人が前回の2014年改正の内容すら知りません。
 介護保険の利用者、家族など介護者が窮地に陥る事態にならないよう、国政の場で、以下の介護保険制度の課題について、被保険者に納得できる根拠にもとづく審議が行なわれるように、以下を要望いたします。

[記]

1. 利用者負担割合を3割に引き上げることに反対します。
 3割負担を議論する前に、前回改正で2割負担となった認定者の家計実態を、高額介護サービス費の見直しの影響とあわせて、調査、検証してください。

2. 「保険者機能等の強化」のため、「認定率の低下」を推奨することに反対します。
 「認定率の低下」を推奨する根拠、並びに利用者および介護者に与える影響を考慮し、議論してください。

3. 2018(平成30)年度介護報酬改定で予定される、訪問介護の「生活援助」人員基準の緩和案に反対します。
 国会において、在宅介護に不可欠な「生活援助」を維持し、質を担保することを確認してください。

以上

介護保険ホットライン企画委員会/介護労働ホットライン実行委員会事務局(市民福祉情報オフィス・ハスカップ)
〒113-0033 東京都文京区本郷2-16-12 ストーク森山302 八月書館気付TEL.090-5786-8700

[別紙介護保険法改正案の課題

1. 利用者負担割合が2倍になり、家計が切迫するケースが出ています。
 2015年8月以降、「一定以上の所得」がある上位2割に該当する認定者を対象に、介護保険制度創設以来、1割だった利用者負担が2割、すなわち2倍になりました。
 また、2015年8月以降、介護施設やショートステイなどの食費・居住費の負担軽減策である「補足給付」(特定施設入所者介護サービス費)の対象基準も厳格化されました。
 利用者負担には、高額介護サービス費で上限が設定されていますが、2015年の見直しに続き、今年8月にも上限額の引き上げがあり、利用者負担がさらに増える予定です。
 厚生労働省資料では、2割負担の認定者のうち、サービスを利用していない「未利用者」が4分の1も存在します。
 電話相談では、施設の場合、利用料が2倍になり「補足給付」からはずれる二重負担にみまわれ、自宅に残る配偶者や介護する子世代の家計が圧迫されている声が寄せられています。
 在宅では、サービスを減らすケースが多く、その分は家族の無償の負担が増え、施設も2割負担では到底利用できない出口なしの構造にあります。
 厚生労働省は2割負担について、高齢者のうち「相対的に所得が高い方」と説明しましたが、「絶対的な支払い能力」でないことは明らかです。
 今後、顕在化することが予測されるのは、働く介護者はさらに「介護離職」の決断を迫られ、家族など無償介護者のストレスは高まり、高齢者虐待、介護心中・介護殺人の要因が増えることです。
 今回の改正案は、2割負担となった認定者のうち「医療保険の現役並み所得」がある場合は3割に引き上げるとしていますが、制度創設当初に比べて3倍の利用者負担にする前に、まず、2割負担となった認定者の生活実態の検証をする必要があります。
 なお、介護保険制度は創設17年になりますが、利用者の約8割を占める在宅認定者の実態調査の実施は皆無です。根拠なく改正を行う前に、少なくとも、在宅の認定者の負担能力も含めた実態を調査、把握してください。

[出典]
・厚生労働省「第193回国会(常会)提出法律案」(2017年2月7日提出)「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案のポイント」1.「現役世代並み所得のある者の利用者負担割合の見直し」
2. 「認定率の低下」は認定申請の拒否につながります。
 介護保険の運営に責任を持つ保険者は市区町村であり、介護保険事業計画にもとづき、認定(要支援認定・要介護認定)を受けた被保険者にサービスを提供するのが基本です。
 今回の改正案では、「保険者機能等の強化」として国、都道府県の「支援」を強化するとありますが、具体的内容は「認定率の低下」による「介護保険料の抑制」です。
 好事例として取り上げられているのは、埼玉県和光市の例です。
 しかし、和光市は、65歳以上の第1号被保険者の認定率が1割未満、特に要支援認定率が8%という低い水準にあり、認定の申請を窓口で受け付けていない可能性もあります。
 介護保険の被保険者は、認定を受けなければサービスを利用する権利(受給権)を認められません。
 国や都道府県から「認定率の低下」を求められ、保険者である市区町村が被保険者の認定申請を受けつけない、いわゆる「水際作戦」を行なう事態が発生することは許されません。
「自立支援・重度化防止」の目的のため、厚生労働省が作成する「適切な指標」の名のもとに、一律に「目標達成」をめざすのは、被保険者の権利を大きく損なう可能性があります。

[出典]
・厚生労働省「2014(平成26)年度介護保険事業状況報告(年報)」
・総務省統計局「人口推計2014年」
3. 「生活援助」の基準緩和は、「介護のある暮らし」の崩壊につながります
 介護保険制度がはじまる前から、介護が必要な人の自宅での暮らしは、ホームヘルプ・サービス(訪問介護)に支えられてきました。
 ホームヘルパー(訪問介護員)はさまざまな病気や障害を持つ利用者宅を訪ね、まず玄関に入れてもらうことからサービスがはじまります。
 性格も生活文化も多様な個人宅の暮らしの維持には、高度な能力が求められます。特にひとり暮らしや高齢夫婦世帯の生活が維持されているのは、ホームヘルパーの「生活援助」が大きく貢献しています。
 利用者の心身の変化にいち早く気づくのは、ホームヘルパーです。
 ゴミ屋敷に代表されるセルフネグレクトや、特殊詐欺にだまされることも未然に防いでいます。
 昨年は「骨太方針」で、「軽度者」と「生活援助」を給付からはずす意見が強まりました。
 利用者の不安は大きく、改正案では「軽度者」、「生活援助」の削減は見送られました。
 しかし、改正案を検討した社会保障審議会介護保険部会は、「生活援助中心のサービス提供の場合の緩和された人員基準の設定については、2018年度介護報酬改定の際に改めて検討を行う」と意見をまとめています。また、ホームヘルパーへの不当な批判も相次いでいます(下記資料参照)。
 ホームヘルパーは研修資格がなければ、サービスを提供することができません。
 人員基準の緩和により、介護報酬を下げることは、実質的にサービス提供事業者によるサービス提供が行えなくなることを意味します。
 結果的には法律を改正しなくても、介護報酬で削減の操作ができるのです。これは、有資格者のサービスを保証してきた介護保険制度の変質であり、被保険者、特に認定者や介護者に対する欺瞞行為です。
 今回の改正案では療養病床の移行を想定した「介護医療院」の新設が予定されていますが、介護保険を必要としているのは、「医療ニーズ」の高い「中重度者」だけではありません。
 内部疾患や認知症、身体障害などさまざまな原因で、介護保険サービスを利用している認定者の「健康で文化的な最低限度の生活」を保つために、「生活援助」が不可欠であることを再確認するとともに、ホームヘルパーを増やす対策を検討してください。

資料・「だらだら続く生活援助」という意見
鈴木邦彦・委員(日本医師会):
 生活援助が自立支援の視点で提供されていないことが多いために、生活動作が自立することなく何年もだらだらと提供され続けているという状況があります。訪問リハビリや通所リハビリを利用していない場合でも、リハビリ専門職が訪問介護に同行して、生活動作が自立するためのアセスメントや目標設定を行えるようにするなどの見直しが必要だと考えます。
土居丈朗・委員(慶應義塾大学):
 自立支援につながらないような生活援助をだらだらとやっているのではないかという疑念があるということは、しっかり受けとめていただかなければならない。
岩村正彦・委員(東京大学):
 鈴木委員も土居委員も触れられましたように、だらだらと生活援助が続くというのは解消していくべきだろうと思っております。
齋藤訓子・委員(日本看護協会):
 自立支援という制度の趣旨に照らし合わせて、生活機能や身体機能の維持、改善に寄与しないサービスを漫然とだらだらやっていくということは、この先もあってはいけないと思います。
[出典]

以上