介護保険制度を中心とする行政情報、各地の市民活動団体の活動などを紹介しながら、みなさんとともに「市民福祉」を考えていくサイトです。

BF114 『介護施設で死ぬということ 生活支援の場のターミナルケア』
「命を最期まで支え抜く」ヒント

NHKの日曜討論「超高齢社会 どうする私たちの介護」(2017年4月2日放映)を観て、率直な発言で、面白い現場の人だなと思ったのが著者。
理学療法士から介護職に転身し、特別養護老人ホーム、デイサービスに勤務し、現在は老人保健施設の「看介護部長」として働く。

本書の「介護施設」は、特別養護老人ホーム、老人保健施設、グループホームなど「生活支援の場」を指す。
年齢を重ねれば、心身の「機能障害」が起きる。
機能障害をなくす、あるいは軽減するのが「治療」で、医療の領域だ。
だが、病気は治っても、もとの身体に戻れない現実もある。
介護とは、治らない機能障害も含めて、「あるがままのその人」を最期まで見届けるものだという。

「家で死にたい」という思いに応えるには、気力、体力、チームの3要素がそろったターミナルケアが準備されないければならない。
介護者の「家で見送る」という思いが気力となり、家族・親族など複数が介護態勢を取る体力があり、それを支える医療と介護のチームワークが必須になる。
だが、在宅介護にはまだまだ、「理想と現実のギャップ」が大きく、自宅でのターミナルケアがまっとうできるケースは「いまだに希なこと」にとどまる。

このため、介護が必要な高齢者は、日常生活が不自由になり、大切な人(家族など介護者)のために、「大いなる自己断念」をして、施設にやってくる。
介護職員にとって、「自立支援」とは、高齢者を「自己断念」から、もう一度、自分らしく生きていこうという「自己実現」に展開していくことという。
生き生きと暮らす姿をみれば、家族もまた解放される。

本書では「介護施設」でのターミナルケアについて、さまざまな事例にもとづき、ていねいに紹介している。
著者は、家族と必ずターミナルケアの方針を決める。
ポイントは、①口から食べられなくなったときにチューブを入れるか、②急変したとき、救急車を呼ぶか、③死後発見になる可能性を受けいれられるかだという。
どのような方針にするのか、家族の選択は多様だ。
大切なのは、亡くなったのち、「もっとしておけばよかった」という反省はしてもいいが、「こんなことになってしまった」と後悔しないことだという。

入院から施設への再入居のしくみや、介護施設での会議、家族で方針が異なるときの解決方法などもアドバイス。
あくまでも本人の意思を尊重しながら、家族の言い分や心情を思いやり、「命を最期まで支え抜く」ヒントを示す一冊。

なお、2017年の通常国会では、介護保険法改正案について、「できることを増やす」という政府答弁が繰りかえされた。
著者が介護の現場で考える「自立」とは、できないことに対しては、きちんと援助を求められる環境にあること、どんな援助を受けるかを選ぶことができること。そして、受けた援助に対して、「健全な感謝の気持ち」を表すことができることだという。それを支えるのが「自立支援」なのだという。
(髙口光子著/講談社/1400円+税)