介護保険制度を中心とする行政情報、各地の市民活動団体の活動などを紹介しながら、みなさんとともに「市民福祉」を考えていくサイトです。

BF116 『フクシノヒト こちら福祉課保護係』
「マザー・テレサは泣かない」

公務員試験に合格して、市役所の福祉保護課に配属された僕。
初日から陽気な歓迎会で盛り上がる保護課だが、ゴミ屋敷への介入で、厳しい現実を初体験。
新米ケースワーカーの「実務指導員」になったのは、キャリア5年の白井野さん。
彼女が「お仕事のためになるお話」をするため、連れていってくれたのはドヤ街の中華料理屋。
行きかう日雇い労働者に紹介されて、「汚いのと、不潔なのと、不衛生なのは、みんな違うの」とレクチャーを受ける。
ある日、近県の警察から担当者を保護しているので、「そっちで対処してください」と連絡が来た。
地元の病院で受け入れ先を確保するには、病院に電話をかけまくって探すしかない。
別の日、亡くなった受給者の親族を探しだしても、「遺体引き取り拒否」にあう。
落ち込む僕を、厄年でも元気な志藤さんが飲みに誘ってくれる。
志藤さんの激励の言葉は、「隣人愛は温かいが、人類愛は冷たい」。
感情移入は隣人愛だが、介護士や看護師、ケースワーカーは「冷徹な愛情っていうようなもんがないとやってけないんだよ」。
きわめつけは、「マザー・テレサは泣かない」という至言。
「一生懸命やって自分がぶつつぶれちまったら、なんにもならんだろうが」と問題提起は、福祉労働者にとって重要テーマだ。
僕は生活保護詐欺にあったり、恋人と価値観がずれてうまくいかなくなったりするが、「雑多な人間の行動を、法律の枠組みに収めるきるのは、とても難しいことなのだ」と実感する。
神奈川県小田原市で、生活保護を担当する市職員(ケースワーカー)が「保護なめんな」とローマ字書きしたジャケットを自前でそろえて、着用していたことが問題になった。
しかし、その発端は2007年、支給を打ち切られた男性がカッターナイフで市職員を切り付けた事件にあった。
一方、生活保護は最後のセーフティネットだが、専門家の多くは、該当者の相当数が利用していないとも指摘している。
本書は「社会派コミカル青春小説」と銘打ち、ケースワーカーの苦労とやりがい、そして課題をわかりやすく教えてくれる。
(先崎綜一著/文芸社文庫/560円+税)