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2017.12.05 「生活援助」について国会議員に要望書を渡しました
2017.12.05 「生活援助」について国会議員に要望書を渡しました

現在、社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋・分科会長)で審議されている2018年度からの介護報酬、運営基準の検討のなかで、ホームヘルプ・サービスの「生活援助」について、ふたつの抑制策が検討されています。
市民福祉情報オフィス・ハスカップは12月5日、衆議院議員(465人)と参議院議員(242人)に以下の要望書を渡しました。

国会議員のみなさまへ
在宅介護生活を支える「生活援助」を守ってください!

 市民福祉情報オフィス・ハスカップは介護保険制度を中心テーマに、電話相談や市民セミナーを開催している市民活動団体です。
 2003年から社会保障審議会の傍聴をはじめ、法改正、介護報酬改定をめぐる情報をメーリングリスト「市民福祉情報」で、無料配信しています。
 2018年度の介護報酬改定の審議では、ホームヘルプ・サービス(訪問介護)の「生活援助」について、介護報酬と運営基準の見直しにより、これまでよりさらに在宅介護が厳しい状況に追い込まれることに危機感を抱いています。
 病気や障害を持つ高齢者は病院からの早期退院をうながされ、特別養護老人ホームは要介護3以上でないと利用できない状況にあります。
 今後、在宅介護への支援の一層の充実が求められるなか、「介護のある暮らし」の基本的なサービスである「生活援助」への制約が強まることにぜひ、関心を持ってくださいますよう、お願いいたします。

1. ホームヘルパーの「生活援助」の水準を維持してください!
 来年度の介護報酬改定の審議では、介護が必要と認定された人たちの在宅生活を支えるホームヘルプ・サービスの「生活援助」について、ホームヘルパー(訪問介護員)の任用条件を「新研修」の導入で、緩和することが検討されています。
 これまで、ホームヘルパーには初任者研修の修了者が従事し、在宅介護を支えてきましたが、「新研修」は研修の時間と内容を短縮し、介護報酬を引き下げることが想定されています。
ホームヘルプ・サービスについて、「生活援助」と「身体介護」は一体的に提供されるべきだと考えますが、今回の介護報酬の改定は、「生活援助」の水準を下げることにつながりかねません。
 介護保険の認定者は80歳以上が7割を占め、ひとり暮らしと高齢夫婦世帯が半数以上になり、8割は在宅サービスを選んでいます。
 介護が必要になる主な原因は認知症がトップになりましたが、身体の状態はもちろんのこと、記憶や判断がおぼつかなくなった認定者の在宅生活を支えるには、ゴミを捨てるという行為ひとつにしても、利用者に「盗まれた」、「持っていかれた」と思われてはいけない熟練した技術が求められます。
 また、「新研修」の導入で人材確保を図ることも構想されていますが、現行の研修でも、383万人にのぼる修了者のうち、42万人しかホームヘルパーとして働いていないのです。
 ホームヘルパーの任用要件を緩和する前に、なぜ、就業者が少ないのかを検証し、登録ヘルパーがほとんどというパートタイム労働の課題を整理する作業に取りくみ、安定的な人材確保を図ってください。

2. 1日複数回の「生活援助」の利用を制限しないでください!
 社会保障審議会における介護報酬改定の審議では、ケアマネジメント(居宅介護支援)の運営基準の見直し案として、一定以上(1日複数回)の「生活援助」を利用する場合、ケアマネジャーは事前に市区町村に届け出を行い、市区町村は地域ケア会議(地域支援事業)などで検証することが提案されています。
 介護保険では、介護認定を受けた人に「サービスを選ぶ権利」があります。
 また、ケアプランはケアマネジャーが一方的に作るのではなく、認定者がケアマネジャーの支援を受けながら作るものです。
 ケアマネジャーが、認定者の要望を汲み、サービス担当者会議のメンバーが合意したケアプランであるにもかかわらず、なぜ、「生活援助」に限って、利用回数を届け出なければならないのでしょうか。
 また、一定以上の回数の基準に全国平均利用回数が使われていますが、在宅サービスの利用量は認定者の支払い能力に大きく左右されるため、必要に基づく利用回数ではありません。
 なお、定期巡回・随時対応サービス(定期巡回・随時対応型訪問介護看護)では、1日3回の定期訪問が標準とされ、小規模多機能型居宅介護では「必要に応じた『訪問』」が提供されていますが、このふたつは市区町村が指定する地域密着型サービス、指定事業所が少ないうえに、月単位の定額報酬の費用が高く設定されています。
 低所得の認定者であっても在宅生活を維持できるのは、「生活援助」を利用できるからなのです。
 厚生労働省の調査では、1日複数回の利用をしている認定者は、独居、認知症高齢者の日常生活自立度Ⅱb以上が圧倒的に多く、調査を受けた市区町村の95%は「適切なサービス利用」と回答しています。
 在宅介護を必要とする人たちが安心して「介護のある暮らし」を続けるために、認定者の「サービスを選ぶ権利」を損なうだけでなく、保険者である市区町村やケアマネジャーへの不信に満ちた運営基準の見直し案を撤回してください。

以上

2017年12月5日
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰 小竹雅子

参考資料1. 「新研修」導入による「生活援助」についての介護報酬の改定案
身体介護と生活援助の在り方
④生活援助中心型の担い手の拡大(基準の緩和)
○ 訪問介護事業所における更なる人材確保の必要性を踏まえ、介護福祉士等は身体介護を中心に担うこととし、生活援助中心型については、人材の裾野を広げて担い手を確保しつつ、質を確保するため、現在の訪問介護員の要件である130時間以上の研修は求めないが、生活援助中心型のサービスに必要な知識等に対応した研修を修了した者が担うこととしてはどうか。
○ このため、新たに生活援助中心型のサービスに従事する者に必要な知識等に対応した研修課程を創設することとしてはどうか。その際、研修のカリキュラムについては、初任者研修のカリキュラムも参考に、観察の視点や認知症高齢者に関する知識の習得を重点としてはどうか。
○ また、訪問介護事業者ごとに訪問介護員等を常勤換算方法で2.5以上置くこととされているが、上記の新しい研修修了者もこれに含めることとしてはどうか。
○ この場合、生活援助中心型サービスは介護福祉士等が提供する場合と新研修修了者が提供する場合とが生じるが、両者の報酬は同様としてはどうか。
出典:社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋・分科会長)第149回(2017.11.01)資料1「訪問介護の報酬・基準について」

参考資料2. 1日複数回利用の「生活援助」についての運営基準の改定案
訪問回数の多い利用者への対応
○ 訪問回数の多いケアプランについては、利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用等の観点から、市町村が確認・是正を促していくことが適当であり、ケアマネジャーが一定の回数を超える訪問介護を位置付ける場合には、市町村にケアプランを届け出ることとし、届け出られたケアプランについて、市町村が地域ケア会議の開催等により検証を行うこととしてはどうか。
出典:社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋・分科会長)第152回(2017.11.22)資料1「居宅介護支援の報酬・基準について(案)」

6.居宅介護支援
⑤ 訪問回数の多い利用者への対応
訪問回数の多いケアプランについては、利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用等の観点から、市町村が確認・是正を促していくことが適当であり、ケアマネジャーが、通常のケアプランよりかけ離れた回数(※)の訪問介護(生活援助中心型)を位置付ける場合には、市町村にケアプランを届け出ることとする。
(※)「全国平均利用回数+2標準偏差」を基準として平成30 年4月に国が定め、6 ヶ月の周知期間を設けて10 月から施行する。

参考資料3. 厚生労働省が提案する「生活援助」の利用回数の「目安」(2SDライン)
[生活援助の利用者]
全体 485,174人
要介護1 204,392人
要介護2 162,482人
要介護3 68,313人
要介護4 34,591人
要介護5 15,396人
[訪問回数の基準「全国平均利用回数+2標準偏差」]
全体 32回(該当者 23,502人)
要介護1 26回(該当者 11,165人)
要介護2 33回(該当者 8,406人)
要介護3 42回(該当者 4,169人)
要介護4 37回(該当者 1,995人)
要介護5 31回(該当者 664人)

参考資料4. 厚生労働省の調査結果「訪問回数の多い利用者(自治体調査結果)」
月90回(1日3回)以上利用している48例
・要介護1/認知症Ⅱb/賃貸/同居家族(要介護2)
・要介護1/認知症有/持ち家/同居家族(障害)
・要介護1/認知症Ⅱa/ケアハウス/独居
・要介護2/認知症Ⅲa/持ち家/独居
・要介護2/認知症Ⅱb/持ち家/独居
・要介護2/認知症Ⅱb/住宅型有料老人ホーム/独居
・要介護2/持ち家/独居
・要介護2/認知症有/持ち家/独居
・要介護2/認知症有/有料老人ホーム/独居
・要介護2/認知症Ⅲa/賃貸/同居家族(要介護)
・要介護2/認知症Ⅲa/持ち家/独居
・要介護2/認知症Ⅱb/持ち家/同居家族(要介護5)
・要介護2/認知症Ⅱa/一戸建て/独居
・要介護2/認知症有/持ち家/独居
・要介護2/持ち家/独居
・要介護3/認知症Ⅳ/持ち家/独居
・要介護3/認知症Ⅲa/持ち家/独居
・要介護3/サ高住/家族(要介護1)
・要介護3/認知症有/持ち家/独居
・要介護3/認知症有/持ち家/独居
・要介護3/認知症Ⅱa/持ち家/同居家族(入所)
・要介護3/認知症Ⅱb/自宅/独居
・要介護3/認知症Ⅱa/持ち家/独居
・要介護3/認知症自立/持ち家/同居家族(要介護5)
・要介護3/持ち家/家族(要介護2)
・要介護3/持ち家/独居
・要介護3/認知症Ⅱa/持ち家/独居
・要介護3/認知症Ⅱa/戸建て/独居
・要介護4/認知症Ⅲb/賃貸アパート/独居
・要介護4/公営団地/独居
・要介護4/認知症Ⅲa/持ち家/同居家族(腰痛)
・要介護4/認知症有/持ち家/独居
・要介護4/持ち家/独居
・要介護4/認知症Ⅲa/持ち家/独居
・要介護4/認知症Ⅱb/戸建て/独居
・要介護5/認知症有/一戸建て/独居
・要介護5/認知症Ⅳ/有料老人ホーム/独居
・要介護5/認知症Ⅳ/借り家/独居
・要介護5/持ち家/同居家族(別棟)
・要介護5/認知症Ⅳ/持ち家/独居
・要介護5/持ち家/同居家族(要介護)
・要介護5/認知症Ⅲa/戸建て/同居家族(仕事)
※認知症:「認知症高齢者の日常生活自立度」

認知症高齢者の日常生活自立度
:何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。
:日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが多尐見られても、誰かが注意していれば自立できる。
Ⅱa:家庭外で上記Ⅱの状態が見られる。(たびたび道に迷うとか、買い物や事務、金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つ等)
Ⅱb:家庭内でも上記Ⅱの状態が見られる。(服薬管理ができない、電話の対応や訪問者との対応などひとりで留守番ができない等)
:日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要とする。
Ⅲa:日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる。(着替え、食事、排便・排尿が上手にできない・時間がかかる、やたらに物を口に入れる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声・奇声を上げる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為等)
Ⅲb:夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる。(ランクⅢaに同じ)
:日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。(ランクⅢaに同じ)
:著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。(せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や精神症状に起因する問題行動が継続する状態等)