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BF118 『絶望老人』
「老いて生きる」人たちの声

日本は世界一、長寿の人が多い国だ。
著者は、カネ、無縁、独居という高齢期の「三大重要課題」を念頭に、高齢者に精力的なインタビューを行なった。

特殊詐欺に遭った81歳の女性は、寂しさよりも人助けをしたい気持ちが強かった。
退職し「毎日が日曜日」で、手ごろな値段の居酒屋に開店直後から集う男性たち。
退職したホームヘルパーが語る体験と「ああはなりたくない」という思い。
認知症の夫を看取った妻の「安堵」。
夫の支配的な介護から救出され、老人保健施設で「お姫さまになったみたい」と喜ぶ女性。

著者は根気を求められる取材を繰り返すなかで、高齢者との会話は、「ループ(繰り返し)」と「ワープ(本筋の内容から、本人の施行が繋がった話題へいきなり飛ぶ)」に特徴があると発見する。

生活困窮者とされる多くの人は「老後のことなんて考えたこともなかった」と語るが、お金を上手に知使う能力が乏しいことが問題だ。
一方で、不自由のない暮らしをしていても「この先が不安だ」という"いくらあっても不安症"に陥っている高齢者も多い。

特別養護老人ホームや有料老人ホームなど施設では「断然長生きする」。
しかし、完全管理体制は「時に本人の望む死に方」を阻むこともある。

ゴミ屋敷につながるモノへの固執には、「モノが増えることで多幸感を味わう生活が長かった」時代体験もあるだろう。
とはいえ、行き過ぎた身辺整理は、気力を失い、記憶の扉を閉ざすことにもなりかねない。

「高度経済成長の申し子」でもある高齢者の老い方は多様だが、超高齢社会は、人生の約三分の一が高齢期という時代を迎えている。
「限界まで生きて、仕方なく死ぬ」時代になり、どのように「老いて生きる」か問いかける。
(新郷由起著/宝島社/1300円+税)