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CF086 『アリスのままで』Still Alice
若年性認知症になったとき

アリス(ジュリアン・ムーア)は言語学博士、夫のジョン(アレック・ボールドウィン)は医学博士で、どちらもニューヨーク市のコロンビア大学教授というインテリ・カップル。
アリスの50歳の誕生日には、法科大学を卒業した長女・アナ(ケイト・ボスワース)、医学院生の長男・トム(ハンター・パリッシュ)とこれまたエリートな子どもたちがお祝いに駆けつけ、公私ともに幸せに包まれた。
唯一の気がかりは、ロスアンゼルスでアルバイトをしながら女優を目指す次女・リディア(クリステン・スチュワート)のことくらい。

働く女性として、妻として、母として人生の最高潮を迎えたアリスだったが、ある日、講演中に突然、言葉が抜け落ちた。
別の日には、ジョギング中、どこにいるのかわからなくなった。
不安を覚えた彼女は、ひそかに神経科で脳の検査を受けた。
結果は若年性アルツハイマー病だった。
「何もかも消える」と打ち明けたアリスに、夫は「僕がついている」と励ます。

彼女は懸命に人生を続けるが、症状は進行する。
学生から授業への不満が殺到し、大学を辞めざるを得なかった。
夫との約束も忘れるようになり、「ガンだったらよかったのに。恥ずかしくないから」とつぶやく。

それでも、アリスは現実を認めて、「私が私でいられる最後の夏よ」とジョンを旅行に誘う。
ところが、夫は愛妻家で医師であるにもかかわらず、最後のところで妻の病気を受け容れることができない。
彼女はスマートフォンにスケジュールを入力し、忘れることと必死に闘う。
主治医に勧められて、認知症の当事者としてスピーチにも立つ。
「私は自分であろうとして、瞬間を生きています」と語るアリスは輝いている。
しかし、その一方では、症状が重くなった未来の自分のために、パソコンにビデオメッセージを準備していた...。

若年性認知症は高齢期に比べて進行が早いとも聞くが、本作ではカメラや音声がアリス本人の感覚で描写されているシーンが関心を引く。
また、病気の妻から逃げる夫、出産間近な長女に無関心な長男、俳優志望を一時断念して母親のもとに戻ってくる次女など、愛はあっても、それぞれの事情や性格でバランスがどう傾くか、という家族群像にも考えさせられる。
(リチャード・グラッツァー、ウォッシュ・ウェストモアランド監督/2014年/アメリカ/101分)