介護保険制度を中心とする行政情報、各地の市民活動団体の活動などを紹介しながら、みなさんとともに「市民福祉」を考えていくサイトです。

CF087 『きみはいい子』
虐待の連鎖を断ち切るには

夫を亡くし、一軒家でひとり暮らすあきこ(喜多道枝)は、ちょっと危なっかしい。
万引きするつもりはなかったのに、スーパーの商品を持ち出してとがめられ、不安と恐怖にかられる。そんな彼女をなぐさめるのは、発達障害の男の子。
小学校への道すがら、掃除に出ているあきこに、彼は必ず「こんにちは、さようなら」と挨拶する。

雅美(尾野真千子)は専業主婦で、夫は海外に単身赴任中。
マンションのママ友たちとそつなく付き合っているが、家の中では幼いひとり娘にいわれのない暴力をふるっては、自己嫌悪に陥る日々を過ごしている。
雅美が娘を叩くシーンが繰り返されるのが、なかなかつらい。

小学校の新米教師の岡野(高良健吾)は担任する子どもたちのいたずらにいじめ、モンスターペアレントへの対応に四苦八苦。
義父から虐待を受けている子どものため、家庭訪問を試みるが、肝心なところで度胸が出ない。
キャリア志向の恋人にも冷たくされて、毎日、落ち込むばかり...。

日本のどこにでもありそうな小都市(ロケ地は北海道小樽市で、坂のある風景がきれいだ)で、同じ時間のなかで、それぞれが孤独のなかでもがく姿が丹念に描かれ、そのリアリティは切ない。
特に、雅美に代表される若い母親の孤立感は際立つ。
きれいなお弁当を作って公園に集い、幼稚園のお受験を話題にするママ友たちのなかで、偽装を重ねる苦痛が伝わってくる。東京のタワーマンションに暮らす若い母親たちの虚栄を描いた小説『ハピネス』(桐野夏生著)を思いだす。

救いになるのは、悪がきも含めて、小さな人たちのエネルギーだ。
岡野のクラスの子どもたちは、「誰かに抱きしめてもらう」ことを宿題にされ、恥ずかしがったり、虚勢を張ったりしながら、両親や祖父母、あるいは兄弟姉妹に抱きしめもらったことを報告する。
演技かドキュメントかはわからないが、教室にあふれる笑顔に大いになぐさめられる。
(呉美保監督/2015年/日本/121分)