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CF088 『イマジン』Imagine
目が見えなくても、見ることはできる

ポルトガルの首都・リスボンにある修道院には、視覚障害の子どものために小さな民間訓練施設が併設されている。
ある日、指導員として全盲の青年・イアン(エドワード・ホッグ)がやってきた。
彼は白杖を持たず、靴のかかとを石畳に打ち付け、指を鳴らし、あるいは舌打ちをして、周囲との距離を測って歩く。

子どもたちは「本当は見えるんじゃない?」と疑い、廊下にタンスや椅子を持ち出してみる。
上手によけるイアンだが、足元に張られた糸には気づかず、派手に転んだ。
怒るイアンに、「杖を使えばいいじゃない」と子どもたちは不満顔。
でも、杖なしで歩くことには、あこがれがある。
イアンは施設の中庭で、子どもたちに耳をすまし、漂う香りを嗅ぎ、「思い描く」ことを教える。
猫にミルクを与える看護師、バラの剪定をする庭師、風にはためくシーツ...。
まわりにある様々な音には意味がある。

イアンの宿舎の隣室には、若いドイツ系女性のエヴァ(アレクサンドラ・マリア・ララ)がいる。
中途障害らしく、閉じこもり気味。
しかし、ひとりで街に出かけるイアンに興味を隠せず、外出したいと頼みこむ。
ただし、「まわりに気を使われて、構われるのは嫌」だから、白杖は持ちたくない。
イアンの肩につかまり、エヴァはこわごわと狭い坂道を歩く。

公園に行き、カフェでハウスワインを楽しみ、笑顔が浮かぶ。
イアンは「港に大型船が停泊している。
教会の鐘が鳴ると、反響でわかる」と語る。
ふたりの行動を知った子どものひとり、セラーノが「やっぱり見えるんだ」とイアンを非難する。
彼は義眼を取り出して手渡し、大笑い。
そして、「大型船が停泊しているのを確かめよう」とセラーノを夜の港に連れ出す。
だが、パトロール中の警官に保護されてしまった。

施設の医師は子どもの安全を最優先し、「君は危険だ。訓練はまかせられない」と解雇を告げる。
イアンが立ち去るのを聞きつけたエヴァは、夢中で彼の後を追いかける...。
中世的な町並みのリスボンを舞台に、映像と音響の美しさが不思議な印象を与える。
イルカやコウモリが、音の反響で周囲を確かめる「エコロケーション」(反響定位)という能力があることは大好きな動物ドキュメンタリーで知ってはいたが、視覚障害の人も活用できるのは驚きだった。
(アンジェイ・ヤキモフスキ監督/2012年/ポーランド=ポルトガル=フランス=イギリス/105分)