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2017.02.18 国会集会2018レポート
2017.02.13
国会集会2018レポート
「介護報酬改定 ケアプランは誰のもの?」

□2018年度の介護報酬改定では、ケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所の運営基準の見直しで、ホームヘルプ・サービスの「生活援助」を1日複数回利用する場合は、ケアプランを市区町村に事前に届け出ることを求めました。
 そして、1日複数回の「生活援助」が必要かどうか、地域ケア会議(地域支援事業の包括的支援事業のメニューのひとつ)などで事前チェックするとしています。
 しかし、厚生労働省が統計的な数字として、「生活援助」の利用回数の「目安」(2SDライン)に設定したのは、月平均32回で、1日1回程度の訪問になります。しかし、要介護1の場合は26回で、1日1回になりません。
 また、厚生労働省の自治体調査では、月90回以上の利用をしているケースは、ひとり暮らし、夫婦ともに認定者がほとんどで、認知症の人が約9割です。
 市民福祉情報オフィス・ハスカップは、在宅介護に不可欠な「生活援助」の制限について危機感を持ち、2月13日に国会集会を開催しました。

□当日は、5人の発言者のみなさんに貴重なご意見をいただき、また、厚生労働省老健局から3人のご出席をいただき、事前質問に対する回答をいただきました。

□介護報酬改定は社会保障審議会の介護給付費分科会(田中滋・分科会長)で検討されました。
 介護給付費分科会に利用者と介護者の立場から委員に参加している田部井康夫さん(公益社団法人認知症の人と家族の会)は、ケアプランの事前チェックに最後まで反対しました。
 国会集会では、「重度の人でも在宅で暮らしていくことが『自立』ではないでしょうか」、「在宅の暮らしには『生活援助』が不可欠です」と訴え、「なぜ、『生活援助』だけが事前チェックされるのでしょうか。今後、あらゆるサービスにケアプランのチェックが可能になるのではないか」と危機感を示しました。

□ケアマネジャーとして17年間、働いてきた水下明美さんは「まず、ケアマネジャーは面接技術を駆使し、個別対応している専門職であることを忘れないでほしい」と語りました。
 今回の運営基準の見直しについては、在宅の利用者の実情を紹介しながら、「もし、介護給付を抑制する必要があるというのなら、ほかに方法があるはず」としました。

□鏡諭さん(淑徳大学教授)は「訪問回数が多い利用者といわれるが、保険者である市区町村は、利用者の私的な契約であるケアプランにどの程度、介入できるのかは未知数」と疑問を示し、「厚生労働省令で事業者は規制できるかもしれないが、ケアプランの是正をうながす権限は市区町村にはなく、あくまでも行政指導でしかない」、「要支援者の体調が崩れた場合などの責任はだれがとるのか。利用者の不利益になることを契約関係にない保険者が指導できるのか」と保険者である市区町村の課題を指摘しました。

□浅川澄一さん(福祉ジャーナリスト)は、今回の介護報酬改定で新設あるいは強化された加算(排せつ支援加算、生活機能向上連携加算など)はすべて医師の指示が必要で、「介護分野に医療が過剰介入している」とし、「治すことをめざす医師が前面に出てくると、生活を支えることをめざすケアマネジャーの専門性が損なわれる」と語りました。

□川名佐貴子さん(『シルバー新報』編集長)は、施設サービスに新設された介護医療院について、「定着支援加算が設けられたが、実質的には医療機関への転換補助金なのに、利用者負担が年間3.4万円~6.8万円も発生する」と指摘し、「医療療養病床が介護医療院に転換してくるのは止められない」として介護給付費が増大し、介護保険料が高騰する可能性を示しました。
 また、ホームヘルパーは高齢化し、総合事業の訪問型サービスにも新たな担い手が集まらないなか、「訪問介護難民が発生する可能性もある」と示唆しました。

□当日は、「厚生労働省への事前質問項目」に沿って、厚生労働省老健局振興課ほか3人の担当者に回答してもらいましたので、回答の要約を紹介します。

○ケアプランは誰のものなのでしょうか?
[回答]
ケアプランは責任ではなく、みんなで検討するもので、最終的には利用者の同意を得るものです。

○ケアプランの事前届け出には法的な拘束力があるのでしょうか?
[回答]
サービスの提供前にケアプランの検証が必要なわけではなく、給付の条件ではありません。

○居宅介護支援事業所やケアマネジャーが、事前に届け出をしないですむよう、「生活援助」の利用回数を自発的に制限する可能性にはどう対応しますか?
[回答]
ケアプランの検証を受けたくないために、利用回数を制限することのほうが、指導監査の対象になります。

○市区町村や地域ケア会議がケアプランの適否を判断するには、当然、利用者宅を訪問して実態把握する必要があると思いますが?
[回答]
ケアマネジャーに確認すればいいので、実態を把握する必要はありません。

○なぜ、訪問系サービスのなかで、「生活援助」だけ制限するのですか?
[回答]
利用回数の上限設定、一律の回数制限は設定できませんが、状況を考慮するというこで、給付の制限ではありません。
あくまでも「自立支援・重度化防止・地域資源活用」の観点で、見直すことが可能な場合です。なお、他のサービスに広げることは考えていません。

○「生活援助」では、利用者の見守りや服薬のうながしなどをしていますが、ほかにどのようなサービスのケアマネジメントが可能と考えているのですか?
[回答]
基本的に「身体介護」になります。

○配食サービスがなく、「生活援助」が1日複数回利用できず、地域の支え合いも乏しい地域で、どのようなサービスが代替可能と考えているのですか?
[回答]
真に必要なサービスを減らすことは考えていません。
(文責・小竹雅子)

[参考資料]
社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋・分科会長)「2018年度の介護報酬改定に関する審議報告」(2017.12.18)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000188370.html
社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋・分科会長)第152回(2017.11.22)資料1「居宅介護支援の報酬・基準について(案)」「訪問回数が多い利用者への対応(自治体調査結果)」