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BF122 『九十八歳になった私』
BF122 『九十八歳になった私』

2019年1月29日に亡くなった橋本治のことは、「女子大生」をしていた1978年、デビュー作『桃尻娘』(1978年)で知った。「団塊の世代」のオトコは「女子大生」をこんなふうに想像しているのか、と思った記憶がある。
そして、40年がたち、68歳の著者はみずからの30年後を想像して、近未来空想科学私小説を残した。

作品では、98歳の作家・橋本治は、東日本大震災の後、東京大震災で隅田川が氾濫し、日光の避難住宅に転居している。
杉並木には人工恐竜のプテラノドン(翼竜)が巣を作り、国会解散が毎年おこなわれ、人工知能が問題を起こす社会に生きている。

作家はのちに誰かに読まれることを考え、執筆を欠かさないが、考えるたびに疲れ、疲れると眠り、起床後に記憶を呼び覚ますのに苦労し、むずかしい漢字を覚えていることに安堵する。
ボランティアの「バーさん」と50代のファン(?)の訪問があり、民生委員や介護士の接触もあり、社会的存在であることをかろうじて維持しているが、よく転びながらも骨折することなく、退屈な毎日を過ごしている。

妄想があふれかえる「意識の流れ」は実験的な試みだが、「自分よりずーっと若い年下の人間であっももう年寄りだというのは、一種のホラーだな」、「老人とは、存在自体が不本意である。生きた自己矛盾である」など、はさみ込まれたつぶやきが現実味を持って迫ってくる。
(橋本治著/講談社/1600円+税)