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BF132 『AI vs.民主主義 高度化する世論操作の深層』
BF132 『AI vs.民主主義 高度化する世論操作の深層』

介護分野ではAI(人工知能)について、「AIケアプラン」や「AI訪問調査」などが試験的に行われている。
また、2020年の介護保険法改正プランには「データ利活用の推進」がある。
介護保険と医療保険を連結したビックデータを構築するという。
ビッグデータはいまのところ、研究者と民間企業にメリットがあるようだ。
市区町村の介護保険事業計画の策定に役立てるという話もあるが、個人データを使われることになる被保険者や利用者のメリットは判然としていない。

それで、読んでみたのが本書だが、最初は少し方向性が違うと感じた。
テーマは「デジタル選挙戦略」だ。
アメリカの大統領選挙では、フェイスブックなどから不正入手した8700万人分のビッグデータがAIで解析(プロファイリング)され、個人の特性や趣味嗜好をしぼりこむ「マイクロターゲッティング」を利用して、SNS上の政治広告が制作され、有権者の投票行動(投票抑制を含む)を操作したという。
イギリスがEU離脱を決めたブレグジットをめぐる国民投票でも、個人データを解析し、世論の誘導に利用してていた可能性があるそうだ(ベネディクト・カンバーバッチ主演のBBC『ブレグジット EU離脱』では、このあたりがくわしく説明されていた)。
日本では2019年、リクルートキャリアの就職情報サイト「リクナビ」が、就職活動をする学生の閲覧履歴などをAI解析し、内定辞退率を点数化して企業に販売していたことが発覚した。
恐ろしいのは「いったん流出したデータは二度と改修できない。データは複製できるし、AIの学習データも残る」ことだ。

終章で紹介されているのは、2018年、EUが施行した「一般データ保護規則」(GDPR)で、ネット上の個人データの保護を「基本的人権」と位置づけた。
なかでも、データの持ち主(データ主体)への説明責任、個人データを消去できる権利(通称・忘れられる権利)、プロファイリングなどに異議を述べる権利などは、「21世紀の人権宣言」(山本龍彦・慶應義塾大学教授)と呼ぶべきものだという。
EUがGDPRを作った背景には、ナチスが収集した個人データをユダヤ人の選別に利用した「負の歴史」があるという。

「いま私たちは、アルゴリズムによって自動的に決定・評価されることが当たり前になる時代に足を踏み入れつつあります」という山本教授の言葉は、介護保険法改正プランにも当てはまる。
私たちは、政府に対して「個人のデータを守る」だけでなく、「情報の使われ方の明示」をもっと求めるべきだ。

(NHK取材班著/NHK出版新書/850円+税)