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BF133 『きらいな母を看とれますか? 関係がわるい母娘の最終章』
BF133 『きらいな母を看とれますか? 関係がわるい母娘の最終章』

介護しあう夫婦や親子には、どのくらい愛情があるのか?
「愛があっても、介護は大変です」とはずされたこともあるが、電話相談でさまざまなケースに出会うたびに、かねがね疑問に思ってきた。
そこで出会ったのが本書だ。

親子関係に踏み込むには、覚悟が必要だ。
著者はプロローグで、自らが複雑で「関係のわるい母娘」であったことを告白する。
だから、介護は「親子間のわだかまりを解かす」、「育ててもらった恩返し」といった情報があふれる「親子愛至上社会」に大きな疑問を抱いた。
そして、当事者として、取材者として、母娘関係に困難を抱えてきた6人の女性にインタビューをした。

彼女たちの体験談には、不在(あるいは不在同然)の父親、モンスターママの過干渉など「アダルトチルドレン」の痛みがあり、親の依存症や家庭内暴力などの苦しみがある。
読みすすめて辛くなるのは、娘になったことがあれば、多少なりとも覚えがある苦痛が、彼女たちの場合はとてつもなく大きいからだ。
だから、彼女たちが、長い逡巡の果てに、自らを守るために「赦さない」「死に目に会わない」「看るつもりはない」「ダメ親との関係を断つ」と決断したことに、ほっとしてしまう。
しかし、彼女たちは、ぎりぎりまで追いつめられたからこそ、一歩踏み出す勇気を持てたとも言える。

少子高齢化が進むなか、介護保険の認定者669万人のうち、女性が458万人、つまり母が約7割を占める。
そして、介護者628万人のうち女性が396万人で、娘が約6割になる。
「老老」の夫婦介護も増えてはいるが、まだ、親子介護のほうが多数派なので、政府統計を単純計算すると、母と娘で854万人になる。
就職や結婚でいったん離れても、老いて再会する母娘の「関係のわるさ」の確率は容易に想像がつく。
かつては娘であった母にも言い分があるだろうが、21世紀の娘たちのゆるやかに停滞した悩みや苦しみは、膨大にあるのだ。

後半には、カウンセラーの信田さよ子さん(『母が重くてたまらない 墓守娘の嘆き』の著者)と、弁護士の松本美代子さんからの精神面、法律面のアドバイスがまとめられている。
なかでも、「成人した子が老いた親を扶養する義務は経済的扶養が原則」だが、「子自身の生活維持が最優先で、余力があれば親の面倒もみましょう、というレベル」という説明に目がとまった。
子に余力がない場合、そして、親に経済力がない場合は、公的な支援に頼ることになる。
老いた母に用意されているのは、介護保険制度だ。
だが、介護保険制度が掲げた「介護の社会化」は、とりあえず、お嫁さんを解放したが、娘たちへの負荷は強化されている。
日本の娘たちは、どこまで「家族愛」の重みに耐えるのだろうか。

(寺田和代著/主婦の友社/1500円+税)