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2020.06.14 補足給付と高額介護サービス費の見直しについての厚生労働省の回答
2020.06.14 補足給付と高額介護サービス費の見直しについての厚生労働省の回答

「社会福祉法等」には、介護保険法改正案が含まれます。
今回の改正案には、「地域共生社会」を実現するため、市区町村が高齢者、障害者、子ども、生活困窮者を総合的に「相談支援」するよう、「重層的支援体制整備事業」を行うことが盛り込まれています。
費用には介護保険料(第1号介護保険料、第2号介護保険料)が使われることになっていて、介護保険の「地域支援事業」の任意事業に該当します。
すでに、2014年改正で、要支援1と2の人へのホームヘルプ・サービスとデイサービスは給付からはずされ、地域支援事業に移されているので、市区町村ごとの地域支援事業の費用配分が気になるところです。

なお、3月6日に同法案が国会に提出され、4日後の同月10日、厚生労働省老健局は全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議を開きました。
総務課資料の「次期介護保険制度改正について」の説明では、「利用者・事業者に関わりの深い改正項目」として、①補足給付の精緻化、②高額介護サービス費の上限額の見直しの2項目を挙げています。
今回の法案では、補足給付と高額介護サービスに関する言及がないため、厚生労働省に問い合わせたところ、以下の回答を得たので、紹介します。

[質問]
厚生労働省老健局では、3月6日に改正案が国会に提出された後、3月10日に全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議を開き、「次期介護保険制度改正について」の説明で、「利用者・事業者に関わりの深い改正項目」として、①補足給付の精緻化、②高額介護サービス費の上限額の見直しの2項目を挙げました。
今回の法律案では、この2項目は、どこに規定されているのでしょうか。
その場合、具体的に厚生労働省令などで、何時頃決定することになるのか、あるいは介護報酬の見直しとセットで行われるのでしょうか。
[回答]
お尋ねの①補足給付の精緻化、②高額介護サービス費の上限額の見直し、については、法律に定められた事項ではなく、①は省令及び告示に定められた事項、②は政令事項であるため、今回の法律案には上記の改正内容は盛り込まれておりません。
予算編成過程において、財務省等と調整をする過程で、引き続き丁寧に検討を進め、本年末までに結論を得ることとしております。

[キーワード]
法律:国会で議決される
政令:内閣の出す法令
省令:各省庁の大臣が発する命令
告示:法律の執行基準を示す(拘束力あり)
通知:行政同士での助言という位置づけ(拘束力なし)
(参考・政治ドットコム

[関連資料]
○衆議院
議案本文
○参議院
本会議投票結果
第201回国会
地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
起立採決により可決されました
○厚生労働省
○厚生労働省老健局

[ハスカップ注]
1. 補足給付について
補足給付は、2003年改正で、施設サービスの食費・居住費が受給者の全額自己負担に見直されたときに、住民税非課税世帯の負担を軽減するために新設されました。
現在、給付費の約4%が使われています。
2015年改正で、補足給付の対象者になる基準に、「世帯分離」した配偶者の所得、預貯金(ひとり暮らしで1000万円程度、夫婦世帯で2000万円程度)などの資産条件が加えられました。
2019年、社会保障審議会介護保険部会に提出された厚生労働省の資料では、収入条件の第三段階(世帯全員が住民税非課税)を二分して、本人の収入が120万円超の場合は食費を増額、預貯金はひとり暮らしで1000万円程度を、収入区分が第二段階は650万円、第三段階は550万円以下、第三段階は500万円以下と、さらに補足給付の対象者を絞り込むことが示されています。
電話相談では、補足給付の厳格化が実施された2015年8月以降、食費・居住費が負担できないため施設サービスを中止した、カードローンを利用しているなどの事例が寄せられています。
ほかの利用者負担引き上げの見直しでも同様ですが、実施後の検証調査はありません。
施設サービスのなかで唯一の生活施設である特別養護老人ホームは、待機者が50万人を超えていましたが、2014年改正で要介護3~5が原則という見直しがあり、数字上では待機者数が半減しました。
特別養護老人ホームを利用する主な理由は、「在宅介護の限界」です。
補足給付のさらなる見直しにより、負担増に耐えられない利用者が「限界を超えた在宅」に戻ることが懸念されます。
2. 高額介護サービス費の見直しについて
介護保険制度創設時に、受給者の自己負担(利用料)は1割が原則で「応益負担」と説明されました。
しかし、2014年改正で「一定以上の所得」がある「相対的に所得の高い」第1号被保険者(65歳以上)は2割負担になり、2017年改正で「医療保険の現役並み所得」がある第1号被保険者は3割負担になり、「おおむね応能負担」と呼ばれる状況に変わりました。
厚生労働省は、「高額介護サービス費があるので」単純に自己負担が2倍、3倍になるわけではないと説明しました。
高額介護サービス費(要支援認定の場合は高額介護予防サービス費)は、世帯で自己負担が月額3万7,200円を超えた場合、保険者である市区町村に申請すれば、差額を償還する負担軽減を目的とする給付です。
しかし、2015年8月、厚生労働省は高額介護サービス費の対象となる上限額を引き上げ、「医療保険の現役並み所得者」がいる世帯は月額4万4,400円になり、7,200円の負担増になりました。
2017年7月には、「医療保険の一般区分の者」がいる世帯も上限額が月額4万4,400円になりました。
厚生労働省の資料では、「医療保険の現役並み所得者」がいる世帯を三段階に分け、①年収約770万円~1160万円は9万3,000円、②年収約1160万円以上は14万100円に見直すことを予定しています。
このため、①で月額4万8,600円、②で月額9万5,700円の負担増になります。
負担能力がある者には払ってもらうという理由づけがされていますが、電話相談では、両親ともに認定者で在宅介護をしている家族から、利用料が倍増したうえ、高額介護サービス費の払い戻しが減り、生活がひっ迫しているとの訴えもありました。
介護離職が年間10万人を超えるなか、再就職困難な在宅介護者が確実に存在し、「8050問題」にみられる引きこもり状態の家族、あるいは新型コロナウィルスの流行により失業し、在宅介護者に転じている無職者も、高齢受給者に扶養されているケースがあると推測されます。