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2020.09.16 省令改正案についての厚生労働省レクチャー報告
要介護認定者は総合事業と給付が併用できる?
2020.09.16 省令改正案についての厚生労働省レクチャー報告

 9月16日、厚生労働省がパブリックコメントを募集している省令改正案について、尾辻かな子衆議院議員の厚生労働省レクチャーに同席しました。
 省令改正案は、要支援認定で総合事業サービスを利用していた人が要介護認定になった場合、「本人の希望」があり「市町村が認めた場合」は、総合事業サービスの利用を継続できるという見直しです。
 2014年の介護保険法改正で、要支援認定の人へのホームヘルプ・サービスとデイサービスの給付は削除され、代替として市区町村事業(地域支援事業)の総合事業サービスを利用することになりました。総合事業サービスには、訪問型サービスと通所型サービスがあり、提供するのは市区町村の委託を受けた事業所です。
 要介護認定にならなければ、ホームヘルプ・サービスとデイサービスできないにもかかわらず、なぜ、このような見直し案が出てきたのか、厚生労働省の説明を聞きました。
(市民福祉情報オフィス・ハスカップ 小竹雅子)

[資料]
募集期間:2020年8月25日~9月23日
[ハスカップ注]
 2020年現在、介護保険で提供されているのは、地域支援事業と給付(予防給付、介護給付)です。
 地域支援事業には、地域包括支援センターの運営など「包括的支援事業」のほか、「介護予防・日常生活支援総合事業」(通称・総合事業)があります。
 総合事業はさらに、すべての高齢者を対象とする「一般介護予防事業」と「介護予防・生活支援サービス事業」に分かれます。
 「介護予防・生活支援サービス事業」の通称が「総合事業サービス」で、要支援認定者と基本チェックリスト対象者に提供されます。
 総合事業サービスには、第1号訪問事業(通称・訪問型サービス)、第1号通所事業(通称・通所型サービス)などのメニューがあります。
 地域支援事業と給付の財源は、ともに介護保険料と税金です。ただし、利用者からみれば、要介護認定者へのホームヘルプ・サービス(訪問介護)とデイサービス(通所介護)は「個別給付」であり、「現金給付」です。ただし、「現金給付は保険者である市区町村が「法定代理受領」して、認定を受けた人には「現物給付」のサービスが提供されるます。総合事業サービスは、市区町村に事業費が支払われ、「個別給付」または「現金給付」ではありません。

尾辻かな子衆議院議員事務所厚生労働省レクチャー
2020年9月16日(水)16時~17時20分
衆議院第二議員会館第五会議室
参加議員
 尾辻かな子・衆議院議員(厚生労働委員、消費者問題に関する特別委員)
 芳賀道也・参議院議員(厚生労働委員・災害対策特別委員)
回答者
 金沢侑加・厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課課長補佐
 平嶋由人・厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課地域づくり推進室地域包括ケア推進係長、生活支援サービス係長(併)、地域支援事業係長(併)

[質問]なぜ、省令を改正するのですか?
[回答]総合事業の「対象者」は厚生労働省令で定めます
○総合事業の対象者は、厚生労働省令で定める被保険者と介護保険法で定められています。
今回の省令改正案は、昨年の社会保障審議会介護保険部会の『介護保険制度の見直しに関する意見』を受け、現在、要支援認定者に限定されている対象者について、本人のご希望を踏まえて地域でのつながりの継続を可能とする観点から行う見直しです。

[質問]要介護認定を受けた人のサービスを利用する権利(給付を受ける権利)が、国会審議にもとづく法律の改正ではなく、厚生労働省の省令で変更できるのはなぜですか?
[回答]給付抑制の見直しではありません
 要支援認定の人が要介護認定になった場合、総合事業と給付が併用できる見直しで、サービスの選択肢の幅が広がり、給付を制限する見直しでは一切ありません。
 地域の支えあいづくりを推進する総合事業の設立主旨に沿って、要介護者の人も対象にする作業をしているところです。
 今回の見直しで、要支援認定で総合事業サービスを利用していた方が要介護認定になった場合、例えば、訪問型サービスとホームヘルプ・サービスを併用できることになります。
 要介護認定の人も総合事業の対象にできるように省令改正をしないと、地域支援事業交付金の対象になりません。介護保険の財源を使って支援するときに、いまの総合事業では要支援認定者か、基本チェックリストで対象になった人に限定されてしまうので、要介護認定者も対象にしたいということです。
 省令改正案は、第8期介護保険事業計画にあわせた見直しですので、来年4月から実施となります。

[質問]省令改正案には、どんな経緯があったのですか?
[回答]市区町村から提案がありました
 介護保険部会の前に、2019年7月に「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」において、自治体よりご提案をいただき、10月9日の社会保障審議会介護保険部会で紹介させていただきました。そして、12月27日、介護保険部会での議論がまとめられました。
 検討会と介護保険部会の議論は、厚生労働省のホームページで公開しています。

[資料]
○厚生労働省老健局
○厚生労働省老健局
社会保障審議会介護保険部会(遠藤久夫・部会長)
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126734.html

[質問]「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会」は、総合事業サービスではなく、一般介護予防事業の「通いの場」を検討していると思っていましたが、なぜ、要介護認定になっても総合事業サービスを利用できるという話になったのですか?
[回答]市区町村や老人保健事業にも意見がありました
 一般介護予防事業についてもご議論いただきましたが、自治体から具体的なご提案があったので、取り組んでいます。
 例えば世田谷区から具体的な提案をいただいております。また、老人保健事業で市町村からさまざまなご意見をいただいています。

[資料]
○厚生労働省老健局
○厚生労働省老健局

[質問]要介護認定者を総合事業サービスの対象にする必要があるのですか?
[回答]「住民主体型」などを交付金の対象にしやすくなります
 「住民主体型」のサービスBには、高齢者だけでなく、児童や障害者も含めて実施しているところがあります。サービスBは、要支援認定者と基本チェックリストの対象者が参加者の半数以上であれば、地域支援事業交付金の対象になります。
 現在は要介護認定者が参加しても、法令上の対象者ではないため、交付金の対象者数にカウントされません。今回、要介護認定者も法令上の「対象者」に位置づけることで、「住民主体型」のサービスも交付金の対象になりやすくなるのです。

[ハスカップ注]
 総合事業サービスを提供する委託事業所は、介護保険のサービスを提供している指定事業所による「従前相当」と「多様なサービス」に分かれています。
 「多様なサービス」はさらに、サービスA(緩和した人員基準によるサービス)、サービスB(ボランティアなど住民主体による支援)、サービスC(保健・医療の専門職による短期集中予防サービス)などに事業所タイプが分かれています。

[質問]なぜ、多くの人が必要としているホームヘルプ・サービスとデイサービスだけを対象にしたのですか?
[回答]要介護認定者は希望があれば、事業と給付を併用できます
 要介護認定者への個別給付(ホームヘルプ・サービスとデイサービス)は総合事業に移行しておりませんが、今回の改正は総合事業のご希望があれば利用できるというものです。
○要支援認定の方が要介護認定になった場合、それまで利用していた総合事業の「従前相当」の訪問型サービスの事業所が訪問介護も提供している場合、ご希望があれば、併用することができます。
 総合事業の「従前相当」の事業所が絶対に介護給付も提供しているかといえば、自治体によって違いますので、絶対そうだとは言えませんが、だいたいはそうだと思います。

[質問]省令改正で対象にできるのなら、要支援認定の人が総合事業ではなく、ホームヘルプ・サービスを希望した場合は、市区町村の判断で利用を認めてもいいのではないでしょうか?
[回答]要支援認定者は併用できません
 要支援認定者の方に対する予防給付であるホームヘルプ・サービスとデイサービスは、すでに2014年の法改正で総合事業に移行しており、法律上の規定なので、省令改正では変更できません。

[質問]「本人の希望」はどのように反映されるのですか?
[回答]「本人の希望」はケアマネジメントで実現します
 「本人の希望」は、適切なケアマネジメントを通じて実現されます。
 適切なケアマネジメントとは、きちんと選択肢が示され、本人や家族とともにケアプランが作らるように、また、作られたケアプランについては地域ケア会議で多職種の目でしっかり確認する機会がありますので、本人にふさわしいサービスが提供されると思っております。
 要介護認定になった方は、居宅介護支援事業所によるケアプランにもとづいて介護給付、そして、ご希望があれば、総合事業のサービスを利用し、利用料が発生する場合は一体的に管理をします。

[質問]サービスBの事業所は、総合事業を提供している委託事業所全体の1割にしかなりません。要介護認定になった場合、介護給付のホームヘルプ・サービスと、あるいはデイサービスにあわせて、総合事業サービスも利用できるということは、併用できる市区町村に住む要介護認定者は得だということですね?
[回答]「多様なサービス」を提供できるようにします
 もちろん、サービスがあるかどうかで利用できる、できないがありますが、厚生労働省としては、多様な提供主体による多様なサービスが提供できるように市町村を支援していく考えです。

[質問]新型コロナウィルスの流行で明らかになったのは、介護が必要な人はプロフェッショナルが支援しなければならないことです。指定訪問介護事業所が「従前相当」として、ホームへルパーを派遣しているからこそ、暮らしがかろうじて継続できているのです。現在、2日あるいは3日の研修を受けただけのボランティアのみなさんに対応できる状況ではありません。現場の緊張感を理解することなく、なぜ、このような省令改正案が出てきたのでしょうか?
[回答]要介護認定者への給付は大前提です
 ご本人の希望ということになりますので、プロフェッショナルのホームヘルプ・サービスをご希望であれば、そちらを利用していただくのが大前提だと思います。

[質問]そもそも介護保険は、高齢者の8%しかサービスを利用していないので、ほとんどの人は総合事業を理解していないと思います。「多様なサービス」と言いますが、市区町村は補助金があるから、なんとか実施している状態です。厚生労働省は今後も「多様なサービス」が増えていくと考えてるのでしょうか?
[回答]「多様なサービス」の底上げをします
 市区町村でやっていただくために、全体に底上げが必要だと考えております。

[質問]新型コロナウィルス下で、「多様なサービス」はほとんど休止しています。サービスBでいえば、ボランティアの担い手はほとんど高齢者です。専門職である介護福祉士の要件などは「サービスの質の向上」を求めて厳しくしているのに、総合事業サービスはボランティアというのでは矛盾していませんか?
[回答]専門職の確保は検討しています
 専門性の確保、人材の確保は大変重要な課題で、介護職員処遇改善加算の創設などで介護報酬上の手当や、来年の介護報酬改定に向けて給付費分科会でどういった支援、評価ができるかご検討いただいているところです。また、コロナ下での事業所への支援や慰労金などの支援をさせていただいております。

[質問]給付のホームヘルプ・サービスより、訪問型サービスのほうがいろいろやってもらえていいという話は聞くことがあります。しかし、ホームヘルプ・サービスでやってもらえないことがいっぱいあるから、総合事業サービスがいいというのは話が逆転していませんか?
[回答]総合事業サービスのほうがいい場合もあります
 適切なケアマネジメントが重要だと思います。給付のプロにやっていただくサービスもありますし、それが毎日なのか、電球交換とか草むしりとかちょっとしたことなのか。総合事業サービスのほうが身軽にできることもあります。

[質問14]介護報酬の引き上げがあり、ホームヘルプ・サービスの報酬が増えても、上限が設定されている総合事業サービスが増えれば、合計収入は減る構造にあります。
[回答]がんばっている市区町村を支援します
 総合事業サービスはもちろん、国からの持ちだしもありますし、介護保険料も使わせていただいているわけですが、市町村がそれなりに財政当局と頑張らなければならないところでありますし、われわれもがんばっている市町村にはそれなりに対応させていただいているところです。

[質問]制度は原理、原則で動くので、対象者を緩和する理由があるとしても、要介護認定者に不利益になる可能性があることは考えていただきたい。
[回答]厚生労働省ではまだ、検討中です
○基本的には介護保険部会の意見に則ってやっていることで、いまは、パブリックコメントを募集中ですので、募集が終わってから省内で検討することになります。

[質問]総合事業サービスがきちんと実施されていない現状、また給付も選べる状況にないのに、選択肢を広げると言われても、なぜなのかという疑問があります。まず、総合事業の実態を把握したうえで、実施すべきではないでしょうか?
[回答]省令を改正しないと、選択肢は広がりません
 確かにばらつきはありますが、要介護認定者が総合事業を使えないのであれば、結果的にいまと変わらない、そもそも選択ができないということもあります。
 どのくらい時間があれば成熟するのかもありますが、自治体に聞くと、みんなで地域でやりましょうと取り組んでいるところもあるので、厚生労働省でできることをしようと考えています。

[ハスカップ注]
総合事業サービスの全国的な実態について、厚生労働省は社会保障審議会介護給付費分科会で現在、調査事業を実施中と答弁しています。2020年度調査ということは、結果が公表されるのは2021年になってからとなります。

以上