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2020.10.01 訪問介護とホームヘルパーに関わる「介護報酬改定についての要望書」
10月1日、介護労働ホットライン実行委員会と介護保険ホットライン企画委員会は、訪問介護とホームヘルパーに関わる「介護報酬改定についての要望書」を厚生労働大臣に提出しました。
また、同日、岸まきこ参議院議員、芳賀直也参議院議員、尾辻かなこ衆議院議員とともに、厚生労働省老健局の担当者との意見交換の場を持ちました。


厚生労働大臣 田村憲久 様
2020年10月1日

介護労働ホットライン実行委員会 共同代表 井堀哲、大江京子、藤澤整
介護保険ホットライン企画委員会 共同代表 小竹雅子、小島美里、林洋子

介護報酬改定についての要望書

 新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、国は、人との接触を減らす、テレワークの推奨を謳ったが、他方で、人との接触が必要不可欠な業種で働く、いわゆるエッセンシャルワーカーといわれる人々の存在が改めて注目されることとなった。介護の現場で働く人々はその代表例といえる。
 しかし、介護現場は、新型コロナウイルス感染症拡大以前から、低賃金・人手不足・長時間労働など厳しい労働環境におかれていた。それが感染症の拡大により、一層悪化している。 
 とりわけ、通所介護や短期入所(ショートステイ)が休止・縮小する中、訪問介護は代替の利かないサービスとして重要な役割を担った。特に発熱等の体調変化で他のサービス利用ができない場合の臨時的対応として、訪問介護は在宅サービスの最後の砦といえる働きをしてきた。感染予防が十分とは限らない利用者宅において介護にあたるホームヘルパーのストレスは、並大抵のものではない。
 訪問介護は、要介護高齢者の生活を支え、孤立を防ぐという重要な役割を担っており、介護が必要になる初期から、終末期まで対応する最も重要な社会資源である。国が推進する「地域包括ケアシステム」でも、介護保険開始以前から「ヘルパーさん」と親しまれてきた訪問介護が重要な役割を果たすことになる。
 しかし、人材難の介護事業の中でも、ホームヘルパーの有効求人倍率は15.03(2019年度)と群を抜いて高く、著しい人材不足に陥っている。また、65歳以上のホームヘルパーが4割以上を占める中、感染症の拡大による高齢ホームヘルパーの退職も進んでおり、このような状況を看過すれば、高齢化がピークを迎える前に在宅介護が崩壊することが危惧される。
 上記理由により、第8期介護報酬改定において、ホームヘルパーに対する安全確保と労働条件の改善を早急に実施し、若年者のホームヘルパーへの就労を促進することを強く求める。

訪問介護とホームヘルパーについての要望項目
 1.ホームヘルパーの不安定雇用の改善
 2.基本報酬の引き上げによるホームヘルパーの待遇改善
 3.ホームヘルパー資格を初任者研修に統一
 4.「生活援助」の月あたりの利用回数制限の撤廃
 5. ホームヘルパーのPCR検査を公費で対応
 6. 「生活援助」と「身体介護」の一本化

1.ホームヘルパーの不安定雇用の改善
 多くのホームヘルパーが、直行直帰を前提とする「登録型ヘルパー」という特殊な勤務形態で雇用されている。1回ずつの訪問に給与が支払われる形で、移動時間に対する賃金も支払われないなど違法な状態が放置され、収入も安定しない職種である。これを改善し、安定した収入が保証される勤務形態にすることが人手不足解消のために不可欠である。

2.基本報酬の引き上げによるホームヘルパーの待遇改善
 介護職員の賃金は全職種平均より月額9万円低く、この低賃金が人材不足に拍車をかけている。介護報酬の引き上げにより、全職種平均同等の収入を実現すべきである。
 訪問介護は前述のような特殊な勤務形態のため、介護のなかでも最も収入が不安定な職種である。 介護報酬(基本報酬)を引き上げることで、ホームヘルパーの収入を増やし、雇用形態を安定することができる。その際、事業所間格差が生じる加算報酬ではなく、基本報酬の引き上げによる抜本的な改善が不可欠である。

3.ホームヘルパー資格の基本を初任者研修に統一
 ホームヘルパーは「介護職員初任者研修」の修了が必須条件で、無資格では従事することができない。しかし、国は「担い手の拡大」策として、生活援助中心型ヘルパーを短時間養成する「生活援助従事者研修」、総合事業(介護予防・日常生活支援事業)の市区町村認定訪問介護員や住民ボランティアへの「入門的研修」など緩和策を続けている。
 ホームヘルパーは、利用者宅に一人で訪問し、限られた時間で全てのサービスを提供する高い専門性を求められる職種である。短時間養成では専門的な業務を行うことはできない。また、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、ホームヘルパーは、感染疑いや濃厚接触がある利用者宅で、細心の注意を払いつつ業務を行うという、さらなる専門性も要求される。人手不足を理由に、十分な研修を受けない人材や無資格者で代替することは訪問介護の否定につながりかねず、人手不足の解消は、賃金の大幅アップや不安定雇用の改善により図ることが原則である。
 「生活援助従事者研修」や「入門的研修」を廃止し、初任者研修の修了によるホームヘルパー資格への統一を求める。なお、感染症対策の「臨時的取扱い」による無資格者の訪問介護の提供は、早急に中止することを求める。

4.「生活援助」の月あたりの利用回数制限の撤廃
 要介護度を問わず、在宅介護の継続に「生活援助」は必要不可欠である。
第7期介護報酬改定では、厚生労働省が定めた月当たりの「生活援助」の利用回数を超える場合、ケアマネジャーは市区町村にケアプランの事前届け出を義務づけられた。事後調査では、あらかじめ「生活援助」の回数を減らしたケアプランが増えていることが示されている。また、市区町村の調査からは、「適切な支援につながらない」、「施設入所につながる」、「代替策がない」という意見が上がっている。
 ケアプランは、必要な人に必要なサービスを提供するための計画であり、「生活援助」の必要回数は、ケアマネジャーやサービス担当者会議など、現場の判断を尊重すべきである。
次期改定では、「生活援助」の利用回数制限、ケアプラン事前届け出制の撤廃を求める。 

5. ホームヘルパーのPCR検査を公費で対応
 1日に複数の利用者宅を訪問する、不特定多数の利用者と家族と接触するホームヘルパーは、感染の危険が大きく、その場合利用者やその家族へウイルスを持ち込む可能性は高い。このため定期的なPCR検査を公費で行うことにより、ヘルパーと利用者の両方を守っていく必要がある。 

6.「生活援助」と「身体介護」の一本化
 訪問介護は利用者の在宅生活を支援するサービスである。現行の「身体介護」と「生活援助」を切り分けて提供することは不合理であり、一本化して提供することによりスムーズな提供を行うことができる。また、「身体介護」1.5時間以上は「生活援助」同等の報酬算定、見守り的援助は「身体介護」に相当など、ホームへルパーや事業所には理解できない規定が存在し、混乱を招いている。就労上もシンプルな規定にすることを求める。

以上

※「介護労働ホットライン実行委員会」は、弁護士を中心に、2013(平成25)年から電話相談「介護労働ホットライン」を開設しています。「介護保険ホットライン企画委員会」は首都圏の市民活動団体で、2006(平成18)年から介護保険制度について、利用者、介護者など広く市民の声を集める電話相談を開設しています。