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2021.08.15 厚生労働省のパブリックコメントについてのケアマネジャーのみなさんの意見
2021.08.15 厚生労働省のパブリックコメントについてのケアマネジャーのみなさんの意見

 市民福祉情報オフィス・ハスカップでは8月18日まで募集中のパブリックコメントについて、ケアマネジャーのみなさんに簡単なアンケートをお願いしました。
 パブリックコメントは、訪問介護の利用を制限するため、ケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所ごとに、契約している利用者の利用限度額(区分支給限度基準額)を合計し、その7割以上のケアプランで、そのうち6割以上が訪問介護の場合、市区町村の地域ケア会議などで「ケアプラン点検」を受けるというものです。

パブリックコメント詳細
e-GOVパブリックコメント
募集期間:2021年7月20日~8月18日23時59分
適用日:2021年10月1日(予定)
問い合わせ先:厚生労働省老健局認知症施策・地域介護推進課企画法令係
電話:03-3595-2889(内線3979)

参考資料

質問1. 区分支給限度基準額から、さらに3割引き下げた設定がされることについて、ご意見をお教えください。

なぜ、規制を強化するのでしょう?
○まず、ありえません。
 第8期の介護報酬改定で、一番困っているのは家族です。
 デイサービスや訪問介護など主力の在宅サービスでは、「限度額を超えるので自費を受けられる方は少ない」と言うより、限度額を超えて利用する方はいないのです。
 限度額を超えないように、仕方なく回数を減らしての利用をしているのに、今回の基準改正により、どこが「家族の介護負担軽減」になるのか疑問です。
 2021度の介護報酬改定では、3月分を4月分にコピーしたら単位数が限度額を超え、デイサービスなどを減らさざるをえない事例もあります。
 厚生労働省は、在宅復帰をうたっていたはずなのに、訪問介護に規制を強化する意味も理解できません。
 施設から帰るところが「在宅」なら、訪問事業所を守ることがあっても、なぜ、規制強化をするのでしょうか?

さらに厳しい状況になるのは困難を抱えた人たちです
〇地域によって社会資源は異なりますが、特に生活援助が必要なのは、独居、高齢世帯、生活困窮者、障害福祉サービスからの移行者など、環境的に介護力が希薄な人たちです。
 区分支給限度基準額の上限まで利用する人たちの多くは、環境に課題がある人たちです。
 疾病によっては、訪問介護でなければ支援が難しいケースもあります。
 ホームヘルパーによるアセスメントも重要であり、利用者のよき理解者であるケースも少なくありません。
 例を挙げていけばきりがありませんが、「不適切なサービス」に位置づけられて、さらに厳しい状況にさらされるのは暮らしに困難を抱えた人たちであり、このような制限があってはならないと思います。

利用したくてもできない人たちのことを考えていない!
○全額使い切っていない人が多いからだと思いますが、「使いたいけれど支払えない」、「使いたいけれど条件が合わなくて使えない」と言った理由があると思います。
 そういった理由の方が一定以上いるので、下げても文句は言われないと踏んでいるのでしょう。
 区分支給限度基準額を超えても利用できる人は、経済力のある人に限られますから、介護保険の懐は痛みませんものね。

給付抑制にほかなりません
○介護サービスは、要介護者の個別の心身の状態、疾患の状態、介護者との関係性、地域性、など多様な要因のなかでアセスメントを行い、ケアプラン作成が行われます。
 介護保険で利用できる区分支給限度基準額という枠に、さらに利用7割の枠を設けるのは、給付抑制以外のなにものでもありません。
 例えば、健康保険で医師に3割負担でも検査は負担額の7割以下、とか薬は7割の6割以下など枠を設けると、治療に大きな制約を加えるのと同じで、大きな影響を与えます。

在宅介護への締め付けは、介護離職を加速しかねない
○介護保険の利用者は85歳以上が50%を超え、心身の低下が進み、独居世帯がトップ、老夫婦世帯と合わせて半数になります。
 在宅を締め付けると、施設入所や入居待機者が増え、介護保険の抑制どころか高騰につながります。
 介護保険制度が、利用者の個別性を無視して、区分支給限度基準額に二重の制限を加えることは、在宅の要介護者を追いつめ、今後さらに介護離職が増えます。
 そうなれば、ますます働き手が減り、政府の言う「一億総活躍社会」は絵に描いた餅になります。

「認知症虐待」ではないか?
○介護が必要になる原因のトップは認知症です。
 誰もなりたくて認知症になるのはありません。
 認知症になっても在宅生活を支える為には、医療も必要ですが、生活を支えるのは介護です。
 そのサービスを制限すると「在宅の虐待」の引き金になります。
 また、介護が必要になる原因の3番目は「老衰」です。
 世界一の高齢社会の日本では、誰もが迎える「老衰」を「入院」で看れば医療が破綻し、「施設」で看れば介護保険高騰します。在宅を支えるのは介護サービスです。

市町村が了承しないと、利用できないのはおかしい
○そもそも、特定施設等の一部で、ケアプランに生活援助が過剰に位置付けられたことに端を発した問題です。
 しかし、パブリックコメントの対応、つまり、ケアマネジャーが事前に自治体にケアプランを提示し了承を得られた場合のみ利用可能とすること自体が、問題ではないでしょうか? 

市町村とケアマネジャーの労力に見合うのでしょうか?
○「点検」の対象となるケアプランを作成しているケアマネジャーが、市町村の求めに応じて書類を作成し、市町村の職員(経験豊富な方もあれば、新たに着任した方もいます)がチェックする。
 この膨大な時間と労力をかけただけの成果が出るという根拠になるデータはあるのでしょうか?

問題のある事業所の是正をすべきでは?
○特定事業所集中減算の時もそうでしたが、どこかの法人が問題だとしても、そこを是正するのではなく、全体を変える手管は、何とも言えません。
 「違反していなければ、問題ないでしょう」と思っているのかもしれませんが、介護保険制度を色々といじることで、ますます複雑化するのは、好ましくないと感じます。

アセスメントの重要性がわかっていないのでは?
○ケアマネジメントにおいて、初回ケアプラン作成で十分にアセスメントができるケースは、どのくらいあるのでしょうか?
 本人や家族がサービスの必要性を感じていない、聞き取りが十分にできていない、サービスの本質を理解していないなど様々な理由により、まずは本人の意識を変化させ、それを行動に結びつける必要があります。
 そのために、まずはサービスを投入して生活を整え、本人が適切に考えることが必要であり、徐々に本来必要なサービスがなにかというケアマネジメントの過程が確立していきます。
 そもそもケアマネジメントの対象者は、心身の状況が悪く、多様な支援を投入する必要があり、また、時間がかかる人たちです。
 そうした前提を無視するのは、本人にとって必要なサービスについては、支援の仕方や支援内容が異なっても、あくまでも本人に決定権があるという大原則に反すると考えます。

介護保険は地域保険です。
○全国的にみても、世帯類型の動向は75歳以上の世帯数が増加し、かつ単独または夫婦のみの増加が顕著であり、更に地域によってその傾向に差があります。
 それまで保たれてきたインフォーマルなサポートがお互いの高齢化で崩壊した地区で、介護の必要な高齢独居者を多く担当している事業者の居宅サービス計画の利用の妥当性を検討する必要があるのかが疑問です。
 各保険者がそれぞれの地域の実情に合わせて適正化を図るべきであり、国が全国一律に区分支給限度基準額7割以上、その利用サービスの6割以上が訪問介護を検証する必要があるという根拠を示していただきたい。

7割以上を制限する動きが広がります
○国が区分支給限度基準額7割以上の利用を検証の一条件とする(資料3にも赤の太字で下線もついています)ことは、プライミング効果により、保険者に7割以上の利用を制限する動きが波及します。
 区分支給限度基準額は要介護度に応じたサービスの標準的な利用の態様や各サービスの費用等を勘案して定められています。被保険者には保険料を納める義務と、保険事故が起きた時に必要なサービスを受ける権利があります。
 利用者が、「区分支給限度基準額以下なのに、必要な希望するサービス量を保険者がどうしても使わせてくれない。」と具体的に生活に困っている点を挙げて、国に訴えたとしても、「国はそんなことは言っていない。支給限度額までの利用を制限していない」と回答されるでしょう。
 今回の検証方法も「効率的で、訪問介護サービスの利用制限にはつながらない仕組み」を求めていることを踏まえて行われるとあります。しかし実際には、市町村が忖度し利用制限が行われることが予想できます。

質問2. 区分支給限度基準額の7割のうち、6割以上、つまり区分支給限度基準額の42%を超える訪問介護をケアプランに組んだ場合、市区町村の検証が必要とされたことについてのご意見をお教えください。

「生活援助中心型」で算定せざるを得ない事例もあります
○今までも訪問介護の「生活援助中心型」の割合が多い場合は、その理由を①一人暮らし、②家族等が障害、疾病等、③その他で、算定理由を行政に報告しています。
 「生活援助中心型」と「身体介護中心型」では単位数が違い、より多くの介入が必要な場合は、仕方なく「生活援助中心型」で算定せざるを得ない事例もあります。
 本来なら施設入居すべき方が、特別養護老人ホームの多床室は120人待ち、ユニット型では補足給付の対象にならなければ、17~18万円はかかります。入居したくても、出来ない実態が現にあるのです。
 厚生労働省は「机上の空論」ばかりで、コロナ対策も収束に向かうことができません。
 そもそも、職員が夜8時以降に宴会をして、感染しているような組織の指示を誰が真剣に聞きますか? 現実をもっと見て欲しいと思います。

訪問介護が在宅を可能にしています
○担当ケースでは、第2号被保険者で、高次脳機能障害のある方がいます。
 10年間、要介護3ですが、ひとり暮らしをしています。
 騒音や耳ざわりな音を嫌がり、日中でも気分の変動が大きいのですが、ADLとしては自立です。
 しかし、次のことができないので、必ず声かけと準備が必要です。
 きょうだいも役割を分担して、交代でサポートをしています。
 毎日の訪問介護、週2回の通所介護を組み、ひとり暮らしを継続し、要介護度はずっと「維持」しています。
 もちろん、地域ケア会議にかけました。
 ひとつの事例ですが、訪問介護が利用できるから、本人のペースでひとり暮らしの継続が可能になっています。
 施設という選択肢もありますが、本人もきょうだいも現在の暮らしが一番あっていると喜んでいます。
 介護を必要とする人の尊厳ある暮らしを妨げないでもらいたいと思います。

悪質な事例は聞いています
○そういったプランは、周りに見当たりませんが、「高専賃(高齢者専用賃貸住宅)の介護を、同一法人のヘルパーを使って、限度額を使い切る」という悪質なサービス事業所があるという調査例を聞いたことがあります。
 そういったところだと、訪問介護のみすごい割合になるサービスですよね。

保険者を苦しめるだけだと思います
○前回の介護保険改正で「保険者機能強化」が登場し、インセンテイブ交付金により市町村を競争させ、お金を出す制度ができました。
 今回も、他市町村との競争で給付削減の圧力をかけ、市町村を苦しめます。
 国の言いなりになり「制限に走る市町村が評価される」ならば、住民を守り、支えるべき立場でいる市町村に対して当然、住民、市民から批判が出てくることになります。

利用者自己決定の基本に反します。
○訪問介護が6割以上の居宅サービス計画は、利用者本人が希望していることが多いと考えられます。介護支援専門員は利用者の立場に立ち、尊厳の保持と自立支援が実現されるよう支援しています。残存能力が低下しないよう、通所系のサービスを勧めたり、訪問介護とリハ職との生活機能向上連携も進めています。介護認定審査会が附帯意見を述べることで、訪問介護以外の必要なサービスの利用を促すことも可能です。
 むしろ深刻なホームヘルパー不足により訪問介護事業者の倒産が急増し、現存している事業所もホームヘルパーが足りないため、利用者の希望するサービスを提供できなくなっているのが現状です。
 それともホームヘルパーが不足しているために、もしくはそれをカモフラージュするために、6割以上の利用を制限するのでしょうか?
 ならば、種類支給限度基準額を設ければいいことになります。むしろ、人手不足を生み出している給与水準の低さや介護職員の処遇の改善に向けての取り組みを国はまずやるべきです。

検証結果を短期間で中間報告し、不要なら中止すべきです
○2018年度の「生活援助の回数によるケアプラン届出」の結果は、半数以上(55.5%)は再考の検討が必要ないと判定され、実際にケアプランの変更があったのは13.5%でした。
 介護支援専門員や市町村の事務負担は相当なものでした。
 介護支援専門員が足りないため一人当たりの担当件数を増やすとしながら、業務を増やすことになりました。
 国が適正化のために何らかの提唱をして「やってる」感を示すための検証に現場は振り回され、迷惑しています。
 今回の検証も必要性が薄いことが判明したら3年を待たずに即刻中止するべきです。

質問3. 厚生労働省は今回の条件設定に該当する居宅介護支援事業所は全国で3%程度と見積もっています。
 市区町村の検証が必要な事業所があると思われますか?
 ご存知の事例があったらお教えください。

いくつか事例があります
○①独居でデイサービスはショートステイ等外に出るのを嫌がり、訪問介護と看護で介護生活を維持する場合には訪問介護が中心になります
 ②コロナ過でデイサービスやショートステイを不安から拒否する場合には、訪問介護が中心になり、在宅生活を支えることになります。
 ③デイサービスやショートステイでコロナ感染者が出て、利用中止などが頻繁にあり、訪問介護に頼らざるを得ないケースもあります。
 ④ターミナル期で在宅で看取りする場合、訪問看護は医療保険になるため、訪問介護が毎日数回入り服薬、水分補給、おむつ交換、体位変換等、頻回に行います。

事例は聞いていません
○対象となる事例は聞いていません。
 しかし、事業所を機械的に抽出するのではなく、運営権者である自治体は、国民健康保険団体連合会のデータから「これは」と思われるような事例をピックアップし、ケアマネジャーに情報提供を求め、介護保険の理念である「自立支援」の観点から、適切か否かを共に検証することの方が有意義なのではないでしょうか?
 利用者ひとりひとりの生活には、本人の状況だけでなく、家族の状況や、さまざまな価値観などの要因があるのに、自己決定権は何処に行ってしまうのでしょうか。

抽出の対象となる事業所の実情は?
○厚生労働大臣が定める基準で抽出され、適切なケアマンジメントが行われていないと判断される事業所については、経営状況や併設のサービスについてもご確認頂きたい。
 居宅介護支援の報酬が低く、単独では経営が成り立たない現状がその原因の大きな部分を占めていると考えられるからです。

以上