介護保険制度を中心とする行政情報、各地の市民活動団体の活動などを紹介しながら、みなさんとともに「市民福祉」を考えていくサイトです。

BF149 『ヤングケアラー わたしの語り』
BF149 『ヤングケアラー わたしの語り 子どもや若者が経験した家族のケア・介護』

2021年5月、厚生労働省と文部科学省は「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・教育の連携プロジェクトチーム」の報告書で、子どもの「介護力」を当てにすることなく、市区町村や「関係団体」に「居宅サービス等」の利用などに配慮するよう「周知を行う」とした。
この報告書は一読では「小さな介護者」に配慮しているようだが、既存のサービスを使うことを指導しているだけにもみえる。
既存のサービスとしては、すでに、学童保育や障害福祉サービス、そして介護保険などのサービスなどがある。
だが、報告書の元になった調査(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社『ヤングケアラーの実態に関する調査研究報告書』、『ヤングケアラーへの早期対応に関する調査研究報告書』など)をみても、なぜ、既存のサービスが利用できていないのか、そして、経済力も含めた家庭の事情は明らかになっていない。

少しは参考になるかと思い、手に取ったのが本書。
だが、予想とは異なり、わずか7人なのに、「ヤングケアラー」たちの体験(現在進行形の人もいる)は、介護の対象になる人、病気や障害の種類、家族形態や介護態勢も多様なものだった。

彼ら彼女らの報告に共通しているのは、子どもには祖父母や両親、あるいはきょうだいを「介護している」という自覚がないことだ。
だが、家族だから手伝うという素直で自然な想いが、介護負担の重圧に押し潰されそうになり、どうやって自分を肯定すればいいのか、もがくように模索を続けている。
介護する子どもであることを認めてほしい、そして、学校生活や就職など「ふつう」の暮らしもしたい。
しごくまっとな願いがあふれていて、教育も福祉も制度としては穴だらけであることを、いちいち教えられてしまう。

先行する自治体では「支援条例」や「相談窓口」を設置するところも散見される。
しかし、物理的な支援策とともに、「小さな介護者」が主体的に語ることができる場を作ること、そして、大人たちが彼ら彼女らの声に耳を傾ける時間を作ることの重要性を教えられたと思う。
これまで読んできた大人の介護者の体験記とは異なり、未熟さも含めた若さの瑞々しさを感じる一冊。

(澁谷智子編/生活書院/1500円+税)