市民福祉情報オフィス・ハスカップは臨時国会に提出されている社会保障ブログラム法案について、つぎのような要望書を衆議院厚生労働委員会の委員45人に渡しました。
衆議院厚生労働委員会のみなさまへ
介護保険の要支援者を給付からはずす「社会保障プログラム法案」についての要望書
市民福祉情報オフィス・ハスカップは2003年から介護保険についてのセミナーや電話相談などを実施している市民活動団体です。
現在、衆議院厚生労働委員会で「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案」(以下、プログラム法案)が審議されています。また、社会保障審議会介護保険部会(以下、介護保険部会)では通常国会に提出予定の介護保険法改正案の議論が終盤を迎えています。
介護保険は法律と介護報酬の改定のたびに複雑になり、制度施行当初に語られた高齢当事者の「自己決定・自己選択」のしくみから遠ざかりつつありますが、今回のプログラム法案と介護保険部会の「論点」を突きあわせると多くの懸念が出てきます。介護保険の基本原則を守るために、ぜひ、下記についてご検討くださいますようお願いいたします。
1. 「地域の実情に応じた要支援者への支援の見直し」法律案要綱四-2-(二)
介護保険制度では、介護保険料を払う被保険者(現在、約7,000万人)は介護認定を受けて初めてサービス(給付)を利用する権利(受給権)を得ます。
社会保障プログラム法案では、市区町村事業である地域支援事業の見直しとあわせて「要支援者への支援の見直し」を行うとあります。介護保険部会では要支援者(要支援1・2)を予防給付から地域支援事業(「要支援事業」を新設)に移すとともに、その財源は給付の伸び率ではなく、後期高齢者の伸び率にあわせて削減するという論点が出ています。
現在、要支援認定者は157万人で、全認定者(572万人)の約3割を占めますが、給付費は6%とささやかです。病気や障害をもつひとり暮らしや高齢夫婦の生活は、介護予防サービス(予防給付)の利用によりかろうじて維持されています。働く子世代が介護離職することなく、別居介護や遠距離介護が成り立つのもまた、介護予防サービスの支えがあるからです。
要支援者向けの「要支援事業」構想では、介護予防サービスよりさらに市区町村格差が広がります。
制度の「効率化」や「重点化」のために、要支援者の受給権を取りあげないでください。
要支援者の介護予防サービスを選ぶ権利を守ってください。
2.「一定以上の所得を有する者の介護保険の保険給付に係る利用者負担の見直し」法律案要綱四-2-(三)
社会保障制度改革国民会議報告書は「負担可能な者は応分の負担を行う」とし、プログラム法案には「一定以上の所得を有する者の介護保険の保険給付に係る利用者負担の見直し」があります。
介護保険部会では「一定以上所得者の利用料は2割負担」という論点があり、「一定以上所得者」は「相対的に負担能力のある所得の高い方」とされ、年収280万円以上、年収290万円以上の2案が出ています
。しかし、後期高齢者医療制度で3割負担となる「現役並み所得者」は年収383万円以上です
。「一定以上」や「相対的」な負担能力で利用料が2倍になるのは、「負担可能」な範囲でしょうか。
サービスが必要なのに “利用控え”する人が増えないよう、「2割負担可能な者」の定義について慎重な議論をしてください。
2013年11月6日
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰 小竹雅子
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