介護保険制度についての【社会民主党】の回答(2021.10.26)
質問1. 訪問介護の今後について
在宅介護の要となる訪問介護は、要支援認定者を給付からはずして地域支援事業に移行するほか、ケアマネジメント(居宅介護支援)による「生活援助」の利用回数の制限が行われました。今年10月1日からは居宅介護支援事業所単位で、契約する利用者の利用限度額(区分支給限度基準額)を合計し、その42%以上の訪問介護を組む場合、市区町村の「点検」の対象にして、ケアマネジメントを経由して、要介護認定者への個別給付を制限する見直しが行われました。
訪問介護の一連の抑制策について、貴党の見解と方針をお教えください。
「訪問介護」についての回答
訪問介護の「生活援助」は介護保険法第1条の「尊厳の保持」「自立した日常生活」を具体化するものです。しかし、社会保障費用の削減政策のなかで、「生活援助」の利用を抑制する法制度の改定が何度も強行されてきました。今年10月から始まった自治体による居宅介護支援事業所に対するケアプランの点検・検証は、ケアプランへの保険者の介入であり容認できません。介護保険制度の基本である「自己選択」「自己決定」を揺るがし、利用者の状態悪化や重度化につながりかねません。
要支援認定者の地域支援事業への移行、「生活援助」の利用回数や時間短縮など、一連の抑制策を点検し抜本的に改善する必要があります。
質問2. 認定者の利用限度額(区分支給限度基準額)について
介護保険では、介護保険料を払う被保険者であるだけでは給付の対象にはならず、認定(要支援認定・要介護認定)を受ける必要があります。
また、認定を受けても、複数の在宅サービス、地域密着型サービスを組み合わせたケアプランを作成する場合、認定ランクごとに利用限度額が設定されています。
1の質問のように、認定を受けた人の受給権である利用限度額に対して、さらに二重の制約がかけられています。
認定を受けた者のサービスを利用する権利(受給権)と利用限度額について、貴党の見解と方針をお教えください。
「利用限度額」についての回答
現在、認定ランクによって利用できるサービスの種類(選択肢)が制限され、さらに各ランクの利用限度額により(量の)制限が行われています。認定についても区分変更、認知症などが軽く判定されるなどの問題があります。利用限度額の制限は、サービス利用の権利(受給権)の制限であると考えます。利用者に必要なサービスが確保できるよう利用限度額を見直すべきです。
質問3. ホームヘルパー(訪問介護員)について
訪問介護を担うホームヘルパー(訪問介護員)は、「登録ヘルパー」と呼ばれる非常勤・時給の労働者が多く、介護労働者のなかでも平均年齢が高いことが指摘されています。また、介護労働者のなかでも離職率は高く、現状でも人材不足が際立つなか、「人材確保」の方策も後継者の養成も乏しい状況が続いています。
ホームヘルパーの確保策について、貴党の見解と方針をお教えください。
「ホームヘルパー」についての回答
ホームヘルパー、特に「登録ヘルパー」に対する処遇改善は急務です。訪問先までの移動時間や待機時間が労働時間として算定されなっかたり、細切れの労働時間やキャンセルなどにより賃金は低く不安定な状況です。このままでは介護最先端の働き手が不足し、介護保険制度の存続が危うくなります。
非正規から正規労働者への転換を図り、賃金が確保され安定的に働き続けることができるよう改善が必要です。介護労働の専門性の確保、社会的地位の向上、それを評価する処遇改善が不可欠です。
質問4. 認定を受けてもサービスを利用していない人たちについて
介護保険に加入している被保険者は2018年度の段階で、7,683万人になります。
しかし、認定を受け、介護保険の給付を受けることが可能な人は658.2万人で、8.7%に過ぎません。65歳以上の第1号被保険者で、認定を受けているのは645.3万人(18.1%)で、約2割にしかなりません。
おまけに、2014年度以降、認定を受けてもサービスを利用していない「未利用者」が100万人を超えています。
2019年度の認定者は669.3万人ですが、受給者は515.8万人で、「未利用者」が153.5万人になります。認定を受けても23%とほぼ4分の1の介護を必要とする人たちがサービスを利用していないのです。
認定の手続きは訪問調査による一次判定、市区町村の認定審査会による二次判定と、時間も手間もかかるものです。面倒な手続きを経てもなお、サービスを利用していない100人を超える人たちについて、対策が必要と思いますが、貴党の見解と方針をお教えください。
「サービスを利用していない認定者」についての回答
介護サービスを必要とし認定の手続をしたにも関わらずサービスを利用していない人が100万人超いることは大きな問題です。何が障害となって利用しない、あるいはできないのか、利用したいサービスがないのか、その理由を調査検証して改善する必要があります。年金が目減りしているにも関わらず、医療、介護ともに保険料・自己負担が引き上げられています。高齢者の消費経済、住宅の保障等の観点も加え、総合的に改善する必要があります。
質問5. 所得の低い認定者について
2000年度にスタートした介護保険のサービスのなかで、この20年間、利用者が10倍以上に急増しているのは認知症グループホーム(認知症対応型共同生活介護)と介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)です。
どちらも利用者負担のほか、居住費や食費、日常生活費などが全額自己負担になります。特別養護老人ホームに代表される施設サービスには、低所得者向けの補足給付(特定入所者介護サービス費)があり、居住費や食費の補助がありますが、認知症グループホームと介護付き有料老人ホームは「施設」に該当しないため、対象になりません。
つまり、認知症グループホームや介護付き有料老人ホームを選択できるのは、一定以上の所得がある人々です。
このため、低所得の認定者は特別養護老人ホームに申し込みをして、在宅で待機せざるをえません。また、特別養護老人ホームは要介護3以上の認定者が原則となり、要介護1と2の人は「特例入所」に該当しない限り、利用することができません。そして、在宅サービスも訪問介護や通所介護など多くの人が利用しているサービスは抑制基調にあります。
介護保険料を払い、介護が必要と認定されているにもかかわらず、すでに利用料の自己負担が苦しいため、少ないサービスでしのぐ、あるいはサービスをあきらめる人も少なくありません。
生活保護の対象にはならない低所得の認定者について対策が必要と考えますが、貴党の見解と方針をお教えください。
「所得の低い認定者」についての回答
現在、特別養護老人ホームの入所者は約52万人ですが22.5万人の入所待機者がいます。国、自治体が特別養護老人ホームの整備、増設を推進していく必要があります。
「補足給付」は、資産要件を厳しくし対象者を絞る等、受給制限が行われています。早急に中止すべきです。補足給付を介護保険財政から切り離し、福祉制度として財源を全て公費として拡大することを検討します。
介護保険三施設以外の認知症グループホームや小規模多機能型居宅介護等について、補足給付と同様の食費や居住費に対する補助制度が必要だと考えます。また、所得の低い認定者に対し介護保険の保険料、利用料の減免制度を検討すべきです。
【社会民主党】の回答
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