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市民福祉情報オフィス・ハスカップは3月7日、「介護保険制度の見直しについての要望書」をすべての国会議員(衆議院議員465人、参議院議員248人)に提出しました。
3 月8日、岸田文雄・内閣総理大臣、鈴木俊一・財務大臣、武見敬三・厚生労働大臣にも提出しました。
介護保険制度の見直しについての要望書
国会議員のみなさま
2024年3月7日
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰 小竹雅子
市民福祉情報オフィス・ハスカップは2003年から介護保険制度について、社会保障審議会の傍聴、メールマガジンの無料配信、電話相談などを続けている市民活動団体です。
能登半島地震の被災から2ヵ月が過ぎましたが、高齢化が進む被災地の復興は長期化が予想されるなか、介護や障がい福祉サービスを必要とする人たち、家族などの介護者、介護を含む福祉労働者の苦境が伝えられています。
このような状況のなかで、2024年度介護報酬・基準の改定が示されました。
とくに、訪問介護員(ホームヘルパー)の有効求人倍率が15.53倍(2022年)という異常な人材難のなかで、訪問介護の基本報酬が引き下げられました。すべての事業所が取得する基本報酬へのマイナス評価は、訪問介護の専門性や普遍性を貶めかねない負の効果を生む可能性の高いものです。厚生労働省は「高い加算率」をつけたとの説明を繰り返します。しかし、加算はあくまでも上乗せしたサービスや提供体制の充実への誘導を目的とするものです。ホームヘルパーの必要数が確保でき、十分なサービスの提供ができる基本報酬の水準を定める必要があります。
また、今回の介護報酬の改定率は、全体ではプラス1.59%です。このうち0.61%は「介護職員の処遇改善分」とされています。ホームヘルパーを含む介護労働者の給与引き上げは喫緊の課題であり、給与に反映される引き上げは歓迎すべきことです。
しかし、介護報酬の上昇は、被保険者の介護保険料、利用料(利用者負担額)に波及します。医療保険料も引き上げが予定され、物価高の影響もあり、在宅(居宅)サービスの利用者がサービスを減らす、あきらめることが懸念されます。施設サービス(ショートステイを含む)の居住費も引き上げが予定されますが、低所得者への補足給付(特定入所者介護サービス費)が抑制されようとしています。2024年度の見直しが低所得者の負担増とならないように対策を講じてください。
介護保険制度の見直しについて、ホームヘルパーをはじめとする介護労働者の安定的な確保、被保険者の経済的な負担に対する配慮を要望します。
介護保険制度の見直しについての要望項目
1. ホームヘルパーの安定的な確保策を早急に講じてください
2. 低所得者のための利用者負担割合を設定してください
3. 施設の食費・居住費への補足給付は現行制度を維持してください
4. 要支援・要介護認定者に訪問介護、通所介護を給付してください
1. ホームヘルパーの安定的な確保策を早急に講じてください
ホームヘルパーの多くは直行直帰の「登録型ヘルパー」という特殊な働き方をしています。給与は利用者宅での滞在時間で支払われ、移動時間、待機時間、キャンセル時間の賃金が保障されない違法状態が放置されているとの指摘もあります。ホームヘルパーの給与を引き上げ、「人材不足」を解消するために、基本報酬の引き下げを撤回し、引き上げる必要があります。また、移動や待機、キャンセルなどに対する加算を定め、ホームヘルパーが納得できる給与体系を事業者が構築できるように見直してください。
ホームヘルパーの減少は、介護を必要とする人だけでなく、「ビジネスケアラー」や「ヤングケアラー」、「ダブルケアラー」など無償の介護者への負担増を意味し、労働人口が減少するなかで、介護離職の増加も懸念されます。在宅介護の要であるホームヘルパーの減少に歯止めをかけ、2040年に約3万2000人が必要という目標を達成する養成計画と補助金を新設し、在宅介護への支援を強化してください。
2. 低所得者のための利用者負担割合を新設してください
介護報酬のプラス改定は、サービスを利用する人たちの利用料の増額に直結します。
負担が増えても、利用者の多くは年金生活者であり、所得が増えるわけではありません。
なかでも、生活保護の対象になる人をのぞき、所得も資産も少なく「負担能力」が低い認定者の負担軽減についての配慮はほとんどありません。利用料が増えたことで、サービスを減らす、中止する人が増える事態は絶対に回避しなければなりません。
現行制度では所得に応じて2割負担、3割負担が課せられるのですから、利用料の増加に耐えられない低所得の認定者には、原則1割とされる利用者負担割合を0.5割、0,3割など軽減する仕組みを創設してください。負担軽減のための費用は、公費で確保してください。
3. 施設の食費・居住費への補足給付は現行制度を維持してください
施設サービス(ショートステイをふくむ)の改定では、2024年8月から居住費(光熱水費)の増額とともに、補足給付の基準費用額が第一段階(生活保護受給者など)を除き、引き上げの予定です。所得が少ないため補足給付の対象になっているのに、自己負担が増え、施設サービスの利用を継続できるでしょうか。補足給付の対象となる人たちの基準費用額は、現行制度を維持してください。
4. 要介護認定を受けた人に訪問介護、通所介護を確実に給付してください
利用者の1人当たり平均費用は、在宅サービスは12.4万円、施設サービスは32.0万円と大きな開きがあります。要介護度は同じでも、在宅と施設の費用になぜ、大きな格差が生じるのでしょうか。在宅サービス利用者の多くは訪問介護と通所介護を利用して「介護のある暮らし」を維持しています。
過去の改正で要支援認定者の訪問介護と通所介護は給付からはずされ、市区町村(区は東京23区)の地域支援事業に移されました。そのうえ、「継続利用要介護者」として要介護認定になっても地域支援事業に留め、給付をしない省令改正が行われ、今回はさらに対象者を拡大する計画です。これは、被保険者が保険料を支払う前提を違えるもので、要介護認定者の受給権を大きく損なうものです。要介護認定者には、確実に給付をしてください。
以上

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