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2025.12.25-02 社会保障審議会介護保険部会 「中山間・人口減少地域」についての『意見』

「人口減少地域」はどこか?
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昨年12月25日、 社会保障審議会介護保険部会は『介護保険制度の見直しに関する意見』をまとめました。
トップテーマは「人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築」で、全国の保険者=市区町村(区は東京23区)を、「中山間・人口減少地域」、「大都市部」、「一般市等」に3分類し、「地域の類型を踏まえたサービス提供体制・支援体制 」に見直すとしています。
とはいえ、「サービス提供体制・支援体制」について、具体的に詳しく書かれているのは「中山間・人口減少地域」です。
「中山間・人口減少地域」と言われると、過疎地など「中山間」を思い浮かべる人が多いと思いますが、注目すぺきは「人口減少地域」です。

「65歳以上人口」は減少しても、「75歳以上人口」は2050年まで増加する
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『意見』は、「65 歳以上人口は市町村の 65%(1,064 市町村)で 2025 年までにピークを迎えると見込まれている」と、すでに「人口減少地域」の保険者が多いことを前提にしています。
しかし、65歳以上人口は減少しても、75歳以上人口が最大になるのは、2030年が594市区町村(34.4%)、2050年が520市区町村(30.1%)と推計しています(国立社会保障人口問題研究所『日本の地域別将来推計人口(2023年推計)』)。

事業所の“需要”に応える見直しは「縮小路線」
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『意見』では、「人口減少地域」の定義はあいまいですが、「サービス提供体制・支援体制 」の提案は具体的です。
おもな内容は、①人員基準の緩和ができる特定介護サービス(基準該当サービス、離島等相当サービス)の拡大、②ホームヘルプ・サービスの月額定額報酬の選択制の導入、③ホームヘルプ・サービスとデイサービス、ショートステイを「地域支援事業の一類型」に移すことを可能とする、という介護労働者や給付の縮小路線です。
ただし、詳細の検討は、2026年の介護給付費分科会に預けられています。
「人口減少地域」に暮らす認定者は、全国共通サービスからはずれ、スタッフの少ない事業所のサービスや、地域支援事業(市区町村事業)の対象になるのでしょうか?
介護保険部会では「需要の変化」という言葉が繰り返されましたが、利用者の“需要”が議論されることはありませんでした。
「中山間・人口減少地域」のサービス空白自治体を増やさない、事業者の“需要”のための方策と考えることもできますが、認定を受けても「利用者本位」の給付が保障されない見直しが並びます。(市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰 小竹雅子)

厚生労働省老健局
社会保障審議会介護保険部会(部会長・菊池馨実 早稲田大学理事・法学学術院教授)
『介護保険制度の見直しに関する意見』(2025.12.25公表)
Ⅰ 人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築
1.地域の類型を踏まえたサービス提供体制・支援体制

[参考資料]
厚生労働省老健局
社会保障審議会介護保険部会(部会長・菊池馨実 早稲田大学理事・法学学術院教授)第133回(2025.12.25)参考資料

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1.「中山間・人口減少地域」の範囲
(地域の類型を踏まえたサービス提供体制・支援体制)
— 「中山間・人口減少地域」、「大都市部」、「一般市等」の3分類
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★社会保障審議会介護給付費分科会等で議論
 国が一定の基準を示し、都道府県が決定する
P.4
[中山間・人口減少地域]高齢者人口が減少し、サービス需要が減少する地域
[大都市部]高齢者人口が 2040 年にかけて増加し続け、サービス需要が急増する地域
[一般市等]高齢者人口が増減し、サービス需要の状況が 2040 年までの間に増加から減少へ転じる地域
P.5
地域の類型の区分については、第 10 期(2027~2029年度)介護保険事業計画期間に向けた「介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針」において示す。
(中山間・人口減少地域)
・対象地域の範囲は、今後、都道府県・市町村における検討の支援のため、社会保障審議会介護給付費分科会等で議論を行い、国において一定の基準を示すことが必要である。
また、同一市町村内でもエリアにより高齢者人口の減少の進展は異なるため、市町村内の一部エリアを特定することも可能とすることが適当である。
・対象地域の特定については、新たな柔軟化のための枠組みの導入の検討に応じて、介護保険事業(支援)計画の策定プロセスにおいて、市町村の意向を確認し、都道府県が決定することが適当である。

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2.管理者や専門職の常勤・専従要件、夜勤要件の緩和(柔軟な対応)
(特例介護サービスに新たな類型)
— 人員配置基準を緩和した事業所指定の拡大、特定施設も対象に
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★介護給付費分科会等で議論
P.7
新たな類型においては、
・ 職員の負担への配慮の観点から、職員の賃金の改善に向けた取組、ICT機器の活用、サービス・事業所間での連携等を前提に、管理者や専門職の常勤・専従要件、夜勤要件の緩和等を行うこと
・ サービスの質の確保の観点から、市町村の適切な関与・確認や、配置職員の専門性への配慮を行うことを前提とすることが考えられ、今後、詳細な要件について、介護給付費分科会等で議論することが適当である。
新たな類型の特例介護サービスについては、現行の基準該当サービス・離島等相当サービスの対象となっている居宅サービス等 (訪問介護、訪問入介介護、通所介護、期期入所生活介護、福祉用具貸与、居宅介護支援等)に加え、施設サービスや居宅サービスのうち特定施設入居者生活介護も対象とすることが適当である。また、市町村が指定権者となり実施している地域密着型サービスにおける同様のサービスについても、同様の対応を実施できるようにすることが適当である。

※介護保険サービスの指定事業者
[標準事業者]指定基準を満たす事業者(全国)
[基準該当サービス事業者]勤務時間要件、人員要件なし(39都道府県204保険者)
短期入所生活介護(99保険者)、介護予防短期入所生活介護(54保険者)
訪問介護(87保険者)
居宅介護支援(46歩保険者)、介護予防支援(23保険者)
通所介護(46保険者)
訪問入浴介護(28保険者)、介護予防訪問入浴介護(6保険者)
福祉用具貸与(18保険者)、介護予防福祉用具貸与(14保険者)
[離島等相当サービス事業者]指定は市町村判断(17都道府県27保険者)
訪問介護 訪問介護員の配置基準は任意
訪問看護 看護職員は常勤換算1.5人以上(標準2.5人以上)
短期入所生活介護 医師、機能訓練指導員の配置基準は任意

参考資料P.15
基準該当サービス・離島等相当サービスにおける現状の課題
・利用者数不足。
・居宅介護サービス費と同等の報酬で設定しているがそれでも経営は厳しい。
・人材確保(特に有資格者)が難しく若者の確保が難しい。離島へ移住しても定住はしない。
・職員が高齢であること、採算性が悪く市からの補助が必要なことから、事業存続が危ぶまれている。

………………………………
3.訪問介護事業所に介護報酬の選択制を導入
(地域の実情に応じた包括的な評価の仕組み)
— 「事業者本位」の介護報酬の新設
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★介護給付費分科会等で議論
P.8
特例介護サービスの新たな類型の枠組みにおいて、安定的な経営を行う仕組みとして、例えば訪問介護について、現行のサービス提供回数に応じた出来高報酬と別途、包括的な評価(月単位の定額払い)を選択可能とすることが適当である。
P.9
具体的な報酬設計については、利用者像ごとに複数段階の報酬区分を設定することや、区分支給限度基準額との関係性にも配慮しつつ包括化の対象範囲を設定するなど、きめ細かな報酬体系とする方向で検討を進める必要がある。
報酬水準の設定に当たっては、現状の十分なデータ分析の下、包括的な評価の仕組みを導入する事業者の経営状況や、サービス提供状況等に与える影響を考慮しつつ、今後、介護給付費分科会等で議論することが適当である。

参考資料P.21
包括的な評価の仕組みのイメージ
[現行:出来高報酬]
・サービス内容・提供時間に応じて回数単位・出来高で算定
・各種加算は事業所の体制や利用者の状態に応じたサービス提供等を踏まえて回数単位・出来高で算定
[包括報酬]
・月単位・定額で算定(要介護度や事業者の体制を踏まえた多段階)
・各種加算も大くくりで包括化、簡素な仕組みに
(標準的な提供回数を超える分等は、別途算定)

………………………………
4.「給付と変わりがない」地域支援事業の一類型
(介護サービスを事業として実施する仕組み)
— 「中山間・人口減少地域」の認定者への給付カット
………………………………
★介護給付費分科会で検討
P.9
中山間・人口減少地域における柔軟なサービス基盤の維持・確保の選択肢の一つとして、給付の仕組みに代えて、市町村が関与する事業により、給付と同様に介護保険財源を活用し、事業者がサービス提供を可能とする仕組みを設けることが適当である。
この仕組みにおいては、要介護者等に対して、訪問介護、通所介護、期期入所生活介護等といった給付で実施するサービスを実施できるようにするとともに、こうしたサービスを組み合わせて提供することが考えられる。
このようなサービス提供についても、利用者との契約に基づき、適切なケアマネジメントを経て、要介護者に対して介護サービスを提供するという点においては、給付サービスと変わりがない仕組みとすることが適当である。

参考資料P.22
[事業による仕組みを活用することが想定されるケース]
①通常の訪問圏域を越えて訪問
②他サービス事業所から訪問
③複数近隣自治体にまたがる訪問
[収入のイメージ]
出来高の報酬(現行)→包括的な評価(特例介護サービスの新たな類型)
「事業による仕組み」は上記に加えて、中山間・人口減少地域における追加的な経費等を勘案
参考資料P.23
地域支援事業の上限額(介護保険法施行令第37条の13)
・介護保険法第115条の45第4項より、地域支援事業は、政令で定める額(上限額)の範囲内で行うものとされている。
・上限額は、各市町村ごと・事業の区分ごとに設定されている。
(2014年度までは介護給付費の額に連動して上限額が高くなる仕組みとしていたが、2015年度以降は総合事業の創設等を踏まえ、各事業の実施に必要な経費を確保し、その円滑な実施を進める観点から、本取扱いへ移行した経緯がある。)

参考資料P.70
介護予防・日常生活支援総合事業 利用実人数(基本チェックリスト対象者、要支援認定者)
[訪問型サービス]
2019年 36.1万人
2024年 31.5万人
(4.6万人減少、マイナス12.7%)
[通所型サービス]
2019年 56.6万人
2024年 57.5万人
(0.9万人増加、プラス1.6%)
厚生労働省『介護保険事業状況報告:結果の概要』
要支援認定者(要支援1、2)
2019年 187.8万人
2024年 209.4万人
(21.6万人増加、プラス11.5%)

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5.「中心的な役割を果たす法人・事業所」へのインセンティブの付与
(介護事業者の連携強化)
— 事業者が促進する「中山間・人口減少地域」構想?
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★介護給付費分科会等で議論
P.10
地域のサービス需要に柔軟に対応する観点から、都道府県や市町村と連携しながら、法人や事業所が、中心的な役割を果たすような仕組みが必要である。
例えば、法人や事業所が、
・ 一定期間にわたり事業継続する役割を担うことや、
・ 複数の事業所間の連携を促進するとともに、他法人・事業所の間接業務の引受けを行うこと等を通じた業務効率化等の取組を推進する
といった仕組みを検討することが考えられ、法人間での人材の連携等を行う場合の配置基準の弾力化に加え、法人や事業所間の連携において中心的な役割を果たす法人・事業所に対して、ICT等のテクノロジー導入に係る補助金等による支援を行うとともに、介護報酬の加算における更なる評価等のインセンティブを付与することについて、介護給付費分科会等で議論することが適当である。

参考資料P.24
介護事業者の連携強化の事例
[介護サービス事業所の経営の協働化の事例]
妻有地域包括ケア研究会(新潟県 12法人・88拠点・164事業所)
一般社団法人福智町社会福祉連携協議会(福岡県 24法人・52事業所)
やまがの介護協働推進ネットワーク(熊本県 10法人・10事業所)
[小規模な事業所間の連携事例]
各好事例は、小規模法人のネットワーク事業の補助金を活用して運営。
社会福祉法人東北福祉会(宮城県) 連携先:社会福祉法人2法人(3法人・5事業所)
課題:つながりのない他法人と連携していくこと
社会福祉法人ふるさと(長崎県) 連携先:社会福祉法人3法人、有限会社1法人(5法人・23事業所)
課題:賛同者を増やしていくこと、継続した支援(財政的、専門的助言等)のための自治体との連携

以上