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31歳の「おれ」は、バブル景気の最中に大卒事務として鉄道会社に入社した。

だが、1年もたたずにバブル崩壊、リストラのなか観光バスの運転手に配置転換されてしまった。

そんなとき、中堅旅行会社の添乗員を辞めたばかりの「相棒」に出会う。

 

「相棒」は観光バス事業に進出するため、

手始めに無認可の白バスでツアーを企画しようと誘う。

中古バスを入手して、ふたりが企画したのは、

おばあさんを対象とする「清貧ツアー」。

おんぼろバスを「レトロバス」と呼び、長野県の秘湯に連れていく「永遠の乙女の旅十日間」。

 

悪質商法まがいの危うい商売は案の定、宿泊先でお客のひとりがいなくなる。

青ざめるふたりだが、なんと「清貧ツアー」は「姥捨てツアー」だという噂が広まり、申し込みが殺到。

ところが、今度は150人の客が全員、

「子どもを捨てることにしました」という書き置きを残して、宿から消えてしまった…。

 

おばあさんたちが「子捨て」に走ったのは、

世間は「年寄りは子どもの家族と暮らすのが幸せ」と言うが、

子ども家族と同居して「何もしなくていいと」と放置され、

病気になれば「より本格的な姥捨て施設」に入るのはイヤだという心情にかられたから…。

 

旅行会社の企画競争、第二次世界大戦末期に作られた大規模地下壕など

興味深いエピソードも織り込まれ、軽いタッチで高齢社会を撃つ一冊。
(原宏一著/角川文庫/540円)