還暦を過ぎた著者は、90歳の母親を在宅介護中。
いわゆる「介護エッセイ」なのだが、
元『将棋ジャーナル』編集長で、
趣味が落語という著者のキャラクターが
ひと味違う読後感を抱かせる。
父親の死後、津軽出身のジョッパリ精神(強情っ張り)の母親は
一人暮らしをしていたが、精神が不安定になり、自殺未遂を起こした。
妻はいやがったが、家を二世帯住宅に改築して同居生活をスタート。
その後、脳梗塞で倒れた母親の世話は妻の担当だったが
心身疲労で入院したため、
著者50歳、母親75歳から息子介護に切り替えた。
1階に暮らす母親に「夜、眠れない」と睡眠薬を求められ、
「昼間、寝てるじゃないかッ」。
これはいたずらにプライドを傷つけたと反省。
ショートステイに行く前夜、
「ここあたしの家なんだから行く必要がない」と居直られ、
「あんたのためじゃない、介護している俺が疲れるから
入ってもらうんだ」と応酬すると、
「そうかい、おまえも疲れるんだ…」と抵抗が止む。
周囲から批判されたくないと過剰介護のストレスで自滅するより、
「私は意地でも過介護はしないつもり」という著者の
意識的な脱力介護の日々を綴る一冊。
(湯川博士著/朝日文庫/609円)
